本年度は、日本人英語学習者に、特定の統語構造を含むターゲット文を、繰り返しシャドーイングさせることで、その文処理が促進されるかどうか調査した。 具体的には、29名の日本人英語学習者を対象に、目的格関係節を含む文(例:The student that the professor drinks teaches his subject at the college.)40文とフィラー文20文を用いてシャドーイングトレーニングを課した。学習者に呈示された音声には、統語境界上に韻律情報(ピッチ上昇、ポーズ)が含まれた。学習者は、音声呈示された英文を即座に繰り返した直後に、その英文内容が意味的に正しければT、間違っていればFと言うことが求められた。 トレーニング前後に、プレ・ポストテストとして、目的格関係節を含む文(例:The farmer that the lady loved grows a crop in the field.)12文と6文のフィラー文を用意した。学習者は、視覚呈示文を音読した直後、その内容が意味的に正しければT、間違っていればFと言うことが求められた。本研究における学習者の回答は全て録音された。 実験の主な結果は、以下の2点である。1プレテストよりポストテストにおいて、ターゲット文の正解数・読み速度・解答速度が有意に向上した。2学習者を、リスニング習熟度テストにより上位群・下位群に分けて分析を行ったところ、正解数・読み速度において、上位群が下位群よりも有意に成績がよかった。また、解答速度においては、プレテストでは上位群が下位群よりも有意に速かったが、ポストテストでは両者の差が見られなくなった。 本研究より、統語構築の手掛かりとなる十分な韻律情報を付加した音声刺激を繰り返しシャドーイングさせることで、統語処理が促進されることが示唆された。
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