研究課題/領域番号 |
19K00858
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
居村 啓子 拓殖大学, 外国語学部, 准教授 (90649211)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 小学校外国語教育 / 児童の発話 / 定型表現 / 定型表現からの分解 / 教師の発話 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の小学生が外国語活動に於いて、英語でどの程度自由度のある発話を行うかを検証する。当該年度は、小学校第5学年の児童32名と教師の発話を対象とし、外国語活動8時間分の録画データ分析した。まず教師の発話を「 説明」、「指示」「ドリル」「提示型質問(あらかじめ答えを知っている質問」「指示型質問(あらかじめ答えを知らない質問)」「発話を促す」「繰り返し」「コメント」「話題を広げる」「明確にする」「より詳な説明」に分けてコーディングを行った。結果「指示を与える発話」「提示型質問」「繰り返し」の頻度が多いことが判明した。 次に、児童の発話タイプを「1語」、「定型表現」、「定型表現よりの分解」、「より自由度のある表現」、さらに「自発的な発話」、「促された発話」に分類した。児童の発話の自由度を最も表す「定型表現よりの分解」は後半大幅に増加していた。 さらに児童の発話の中で、定型表現の分解がはじまった13時間目と、36回と大幅に増えている15時間目に着目し、教師の発話の頻度と比較した結果、13時間目では、教師の「指示」「ドリル」「提示型質問」が多く、15時間目では教師の「説明」と「指示」「指示型質問」が多いことが分かった。また児童と教師の発話の全体の相関を測ったところ、定型表現の分解とやや強い正の相関が見られたのは児童の「より自由度のある表現」と教師の「話題を広げる」発話、負の相関が見られたのは児童の「1語」「促された発話」教師hの「指示」「提示型質問」「繰り返し」であった。 以上の分析結果から、児童の自由度のある発話は、授業回数を追うごとに増加しているという結果に加えて、教師が授業でより多くの何等かの内容について説明をしたり、指示を行ったり、質問を投げかけたり、内容を広げたりすることが、児童のより自由度のある発話を促すことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は小学校外国語活動の授業8回分の書き起こしと、児童の発話のコーディング、また授業内容の分析を行った。当該年度は、さらに教師の発話の分析を行い、児童のより自由度のある発話との関連を見た。いずれも、COLT(Communicative Orientation of Language Teaching Observation Scheme)を参考に、独自のコーディング基準を設け、各項目の頻度をカウントするという手法で行った結果、児童の発話の自由度の推移、授業内容、教師の発話との関連性が徐々に見え始めたと言える。ただ、あくまでも1学年8時間分の授業の傾向を分析したにすぎず、一般化できるまでに至っていない。さらに別の学年のデータの分析を進めることによって、今回得られた結果の裏付けをする必要がある。当該年度は、同小学校第6学年の1年分のデータの書き起こしを平行して実施する予定であった。次年度に向けて、同じ分析手法でさらに多くのデータを検証していく。
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今後の研究の推進方策 |
今後研究を進めるにあたり、いくつかの問題点が浮かび上がった。まず、本研究が行ったデータのコーディングはCOLT(Communicative Orientation of Language Teaching Observation Scheme)を基準にした独自のものである。これは児童の発話をチャンクとその分解に分ける必要性から、個別に設けた基準であるため、児童の発話と教師の発話との比較検討は難しい。これまで、見直す項目として1.授業内発話のコーディングの基準、2.授業内容の分類基準、3.児童の発話の分類基準を上げてきたが、さらに4.COLTをそのまま使用した分析をパイロット的に行い、傾向をみることを検討したい。このことにより、教師と児童とのやり取りの傾向をより詳細に見ることができるであろう。 さらに次年度以降は教師と児童のやり取りを質的に見る手法を検討していく。これまでの研究成果から、市立の小学校外国語活動に於いても、児童の自由度のある発話は実際に起こっていること、授業内容や教師の発話との関連がある程度判明し、全体像が見えた。今後は、定型表現からの分解が起こった児童の発話をひろい、その前後の「やり取り」を抽出し、そこで何が行われているかを詳細に検証していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は予定していた国際学会での発表が中止となり、計上した次年度の使用額の通りとなっている。次年度は、既存のデータ量を増やす予定である。書き起こしにかかわる費用と、コロナ過が落ち着いた場合の、国際での発表、海外ジャーナルへの投稿に伴う費用、及び機器備品などの経費を計上する予定である。
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