本研究は、日本の小学生が外国語の授業において、英語でどの程度自由度のある発話を行うかを検証した。対象者は市立小学校第5学年児童32名で「外国語」の授業内発話を書き起こし分析した。研究の問は、1.小学校外国語の授業に於いて、児童の自由度のある発話はどの程度見られるか。2.児童の自由度のある発話を促す要因は何か、である。児童の発話は①1語、②定型表現、③定型表現の分解、④その他の自由度のある発話に分類した。 まず全8回の授業の中で、実際に児童は定型表現を分解して、自由度のある発話を生み出す現象が見られた。そこで、最も児童の発話の自由度が高かった授業回と、低かった授業回を比較した結果、前者では教師の「説明」と「指示型質問」(予測可能な質問)が多く、後者では「ドリル」や「提示型質問」(予測不可能な質問)が多いことがわかった。 さらに、授業の内容をドリル、エクササイズ、タスクに分けて、児童の発話との関連を見た結果、児童の発話の定型表現の分解は、ドリルやエクササイズではなく、何らかのタスクにおいてより多く起こっていることが判明した。 児童の発話の自由度とタスクとの関連が示唆されたことを踏まえ、さらにCOLT (Communicative Orientation of Language Teaching Observation Scheme)を使って、小学校「外国語」必修化前の2017年の同教諭の5年生の授業7時間分と、必修化後の2021年の授業7時間分を比較した。結果授業内インタラクションにおいて、必修化の前と後とでは大きな差は見られなかったが、児童の発話は「外国語」必修化以後の授業では、1語が減少し、定型表現と定型表現の分解がより多く起こっていた。 結論として、実際に児童は自由度の高い発話を行うこと、そして授業で行われるタスクが、より自由度の高い発話の要因になっていることが示唆された。
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