研究課題/領域番号 |
19K00861
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
佐藤 玲子 明星大学, 教育学部, 教授 (20735039)
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研究分担者 |
山口 真佐子 明星大学, 教育学部, 教授 (30833107)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 英語教育 / インクルーシブ教育 / インプットとアウトプット / 学習支援(足場架け) / ユニバーサルデザイン / アクティブラーニング / 自立活動 / アセスメントツール |
研究実績の概要 |
2020年度は、(1)前年度作成した学習・行動・感覚面からの観察表①のパイロット版②・改訂版③の開発と(2)既存のアセスメントツールとの比較、(3)この観察項目表の使い易さの調査、(4)調査対象児童6人(3学年)のクラスでの指導および学習支援の分析を行った。 (1)観察項目表②では、感覚や認知の困難に焦点をあてた学習場面と生活場面における観察項目にして、学習場面に表れやすい行動チェック32項目、生活場面に表れやすい行動25項目とした。観察項目表①は各項目をチェック欄1つ、観察項目表②は5段階評価(問題がない1点-毎時間ある5点)のチェック欄を設けた。そして、現場の教員の意見を参考にして、観察項目表③の開発した。(2)児童2名(小学校1年生と3年生)を観察項目表②で観察し、その結果を彼らの日本版SPのアセスメント結果と比較した。SPで高いスコアの児童と平均域であった児童との間、観察項目表の学習面でも行動面でもスコア差が出た。(3)使い易さ(「項目は誰にも分かりやすい表現か」・「実施者が異なっても同じ結果が得られるか」)について、特別支援専門員(観察項目表①を使用)とHRT(観察項目表②を使用)の2名による特別な支援が必要と思える児童6名の観察結果から検討した。特別支援専門員が付けたチェック項目にHRTは4,5評価をしていた。但し、1,2項において評価の違いがあった。質問項目の構造の再検討が課題である。 (4)(3)の児童6名は、①注意持続時間が非常に短い、②場面の切り替えが出来ない、③自分の考えを主張するが、友だちの意見を受け入れられないという傾向が大きかったので、④デモンストレーションやSmall Talkに教員と児童全体でのやり取りを入れる、⑤得意なことを活かす・歌や体の動きなどで切り替える、⑥協働活動を目指して、先ずは共同活動をすることで、積極的な授業参加が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究前半の研究目的:通常教室での障がいがある・疑わしい・障がいがないの判断をするための観察項目表(改訂版)が完成しました。特別なニーズに合わせた英語教育のおける指導については、その観察項目表の使用から、「気分の切り替えが困難」、「注意持続時間の短さ」、「協働学習の困難」が明確になり、それに対処する指導法の例を提案できました。しかしながら、昨年度よりのコロナ禍で、国内外の学校・授業視察ができなくなり、計画どおりに支援データが集まっていません。 この研究は、個に応じた指導法やインクルーシブ教育での指導法を調査するために、アメリカ合衆国の調査や広島、長野の一斉授業ではない特徴ある指導法、また、児童が生き生きと参加する日本のさまざまな言語活動例の収集して、児童生徒の多様性に対応した足場架け(支援)モデルの構築を目指しているものです。その上で、実際の教室で学習支援・指導実践を行い、そのモデルの検証をしようと計画しています。 コロナ禍での移動制限や接触を避けなければならない現状を鑑みて、国内外の視察調査を取りやめ、英語支援例の収集法を、文献、および、ネットサーチ、オンラインで協力依頼で行うことに変更しました。 国内外の視察調査は、新型コロナウィルス感染の心配がなくなった時点で行い、足場モデルの補強をしていこうと考えています。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究は、以下2つのことを進めていく。 (1)観察項目表については、信頼性・実用性・妥当性をさらに高めたものを目指していく。 ①観察者がHRT以外でも同じような観察結果が得られるように、項目の構成を再構築し、観察項目も厳選し回答しやすい観察項目表の作成する。②開発した観察項目表と既存のアセメントツール(WISC-Ⅳおよび日本版SP)の比較をしていく。③被験者数・ケースを増やす。そのためにオンラインアンケートも検討する。 (2)足場架け(支援)モデル構築のために、通常教室での特別ニーズを必要としている児童生徒の学習への集中力の高まりや積極的参加が見られた指導例を収集する。そのために、協力者の教員に授業の振り返りも兼ねた活動観察ファイルを配布し、記録を依頼する。そして、学習環境調整や学習支援のための要因を見つけ出していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍の影響を受け、予定していた国内外の学校・授業視察が実施できなかったこと、参加できた学会が予定よりも少なく、また、オンライン研究大会となったため、交通費・宿泊費が かからなかったためことから、次年度使用額が生じた。 2021年度は、オンラインでのデーター収集、インタビュー等のためにICT機器の充実と、新型コロナウィルス感染防止対策を取りながら可能な範囲で視察に使用する予定である。そして、足場架け(支援)モデルの構築のための指導実践の幅広い情報収集のために、もし来年度末、2020年度に予定していた国外視察調査ができるようであれば、行いたい。
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