研究課題/領域番号 |
19K00861
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
佐藤 玲子 明星大学, 教育学部, 教授 (20735039)
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研究分担者 |
山口 真佐子 桜美林大学, 健康福祉学群, 特任教授 (30833107)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | チェックリスト / 個別指導計画 / 英語の授業支援 / 感覚処理困難 / 自立活動 |
研究実績の概要 |
2022年度は(1)それまでに開発してきた自立活動に基づく観察項目から、英語の指導により焦点を当てたチェックリスト(20項目)を、作成して検証した。(2)特別のニーズのある児童生徒にとってより学び易い学習環境にするための支援例や授業での個別指導の提案を行っていった。 (1)チェックリストについては、「児童の感覚処理困難を評価するチェックリスト」であり、A領域(感覚3項目、コーピング4項目、行動コントロール3項目)とB領域(聞く・話す3項目、読む3項目、書く4項目)の20項目から構成している。検証の方法としては、倫理的配慮を行いながら、①妥当性、②信頼性、③実用性について行った。①については、放課後等デイサービスに通所児童10名に対して、アセスメント研修を受けいる4名が実施した学校適応スキルプロフィール(ASIST: Adaptive Skills profile of students: Information of School-Teachers & Trainers)とチェックリストの点数を比較し、その結果、相関が見られた。②については、チェックリスト実施者の教師3名によって通常学級の小学5年生80名を対象に行った評価結果から産出したCronbachのα係数で内的整合性が示された。③については、①チェックリストを使った評価にかかる時間と使用感想から、負担なく使用できることがわかった。 (2)児童がより学び易い学習環境にするための支援や授業については、そのチェックリストを使って児童把握を客観的に行い、個別指導案を作成し、授業の指導や支援に活かした授業実践を行った。そして、授業実践での児童の変容を観察し、特別のニーズのある児童・生徒への困り例や学習改善が見られた手立て例を、チェックリストに付けている困り例や手立て例リストに加えることと、定期的な勉強会を設け、充実化を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
開発したチェックリストの信頼性の検証で、A領域(感覚、コーピング、行動コントロール)とB領域(聞く・話す、読む、書く)のうち、感覚のみがCronbachのα係数が低かった。この一因としては、コロナ禍の影響で教員が対面でうまく評価出来なかった可能性が考えられる。また、チェックリストを使った対象者数を同学年で絞ると80名となり、もう少し対象児童生徒数を増やして検証する必要がある。 2022年度も児童生徒のコロナ感染、遠隔授業での授業参加の状況下で、個別指導の実践授業の視察も計画どおりに実施できなかった。チェックリストでの評価をし易いように作成した、児童生徒の困難例やそのための手立て例のリストは、特別支援学校教育要領・学習指導要領解説自立活動編第6章をもとに作成したが、10件の個別指導案を作成し実施した結果、さらなる困難例や手立て例があった方が、チェックリストが使いやすくなることがわかった。研究の目的である「足場架けモデルの構築」のためにも、チェックリストを使って児童生徒把握をし作成した個別指導案をもとに授業を実施し、実際の支援の成功例や失敗例から得られる困難例・手立て例が必要である。そのためには、個別指導・授業改善の実施を増やし、その結果を教員間で情報共有しながら、リストを充実させる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、以下4つである。 (1)チェックリストで評価する対象児童生徒の数を増やし、チェックリストの信頼性を検証する。(2) 困難例や手立て例のリストの充実化を図る。①そのためには、個別指導が成功している授業・学校の視察をし、成功の要因を探る。②チェックリストを使った児童生徒の把握をし、要支援・要配慮の必要がある児童生徒の個別指導案を作成する。それを基に実践した指導・授業を増やす。③協力者の教員の情報交換の場を定期的に(月一回の予定)設け、困難例や手立て例の共有し、より良い個別指導案を作成する。(3)一般参加のセミナーや勉強会を開催して(2か月に1回の予定)、通常教室での個のニーズに合わせた指導、特別な配慮や支援の知識・実践例の共有や理解を深める。(4)(この科研研究の目的である「足場架けモデルの構築」を試みる。 * (2)で作成する支援の指標となる「児童生徒の困難例と手立て例リスト」と(2)③や(3)で実現した定期的な勉強会は、この科研研究の成果物であろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響がまだあり、学会・セミナー等はオンラインでの開催、また、国内外の学校視察が難しく計画どおりに実行できなかったため、また、調査実施や研究発表のための打合せ等もZoom Meetingで行い、予算として計上していた交通費および人件費を使わなかったためである。 2023年度は、計画していた国内外の視察に行く予定である。また、出席予定の学会も、対面式となり、交通費、データおよび報告書の作成のための人件費が必要となる。
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