研究課題/領域番号 |
19K00862
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
亀井ダイチ 利永子 立正大学, 文学部, 特任講師 (50779692)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 外国語教育 / 日本史 / 語学力 / グローバル視野 / 英語で学ぶ |
研究実績の概要 |
本研究は英語で日本史を学ぶという教養科目授業において、語学力向上とグローバルな視野の育成を図る指導法の調査を行い、そのための教材開発の基盤を構築することを目的としている。 研究の初年度として、本年は日本史を英語で教える際に参考になりそうな書籍の収集(日本語及び英語。一般向けのものと学術書ともに含む)と、その分析を主に行い、学生へのリアリング調査を開始することによっていくつかの問題点を明らかにしていった。英語で発信することを目的として執筆された一般向けの日本史関連の書籍は幾つもあるが、重点が簡単な英語であるということにおかれているために比較的語学力が低くとも取りつきやすい利点はあるが、内容が犠牲になる傾向がある。逆に、英語圏で出版されている日本史関連書籍には、当然のことながら語学教育の視点は欠けている。その辺りのバランスをどうとるかが課題となる。 日本史を英語で学ぶ上で学生が当初ぶつかる困難のひとつは、歴史的用語などの語彙である。歴史研究には多々の専門用語があり、簡単に英訳できないものも多い。それをどう説明していくか。また同じ言葉であっても時代によって意味に差異が生じており、一般的に紹介される「この言葉は英語で何々」という単純な言語の置き換えでは必ずしも通用しない。語彙の選択によっては意図しない誤解を招くこともある。それを学生に気づかせることにより、単語の意味の理解の深化、語彙の増加を図り、歴史的事象の解釈の差異や歴史の動きの捉えなおしを行うことが可能ではないかと、幾つかの指導法を模索している。こうした分析に関する成果は、ほんの一部であるが学部のSNSであるFacebookや、大学が一般向けに行っているデリバリーカレッジでの講演(立正大学令和元年春期デリバリーカレッジ「天皇はemperorなのか?歴史用語の英訳について考える」座間市開催)にも反映させ、社会に還元している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度においては、日本及び英語圏で出版された英語で書かれた日本史に関する文献(これは学術書のみではなく、一般向けの書籍も含まれる)を収集し、語学レベル、また取り上げられている内容、アプローチなどを対象とする分析を行った。また自身が担当する英語で行う日本史の授業の履修者を中心に、学生が語学面でどういう問題にぶつかりやすいのか、またこうした授業に対して何を最も期待しているのか等に関するヒアリング調査を行った。こうした分析や調査により、解決すべき問題点が幾つかあきらかになっており、またそれに対応するための指導法への仮説を立てることができている。その点、ほぼ予定通りの進捗である。 初年度から開始し、最終年度にかけて継続的に実施が予定されていた教員同士のネットワーク構築に関しては、初年度に自分の担当する授業の他に代理の授業を急に担当することになったことから予定よりやや遅れが生じている。しかしメール等の活用により、少しずつではあるが着実に構築へ向けて進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の文献調査を基に、2年目は主に実地調査として国内・国外の大学においてどのような指導法がなされているのかを調査し、その上で3年の目の検証を行う予定であった。しかし新型コロナ感染症の拡大の影響で調査予定先であった大学の全てがオンライン授業にシフト、または休講の措置を取っており、また国外はもちろんのこと、国内においても移動に制限があるため、実行が非常に困難になっている。 そのため実地調査は来年度にシフトし、今年度は初年度に引き続き文献調査を行うかたわらで学生へのヒアリング調査に重点を置き、その結果を中途報告としてまとめる予定である。また、初年度の調査による仮説に基づき、幾つかの授業実践をしていく予定である。しかし、少なくとも前期においては担当授業が全て授業がオンラインという状況のため、充分な結果が得られない可能性が高い。その場合、一年の延長を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に購入予定だった書籍の内、特に比較的高価な英文の学術書について他の研究者から譲り受けることが出来たものがあったため、その分の金額を次年度への書籍購入へあてることにした。また初年度後半から研究者のネットワーク構築のため可能であれば国内出張を開始する予定していたが、予想外で代理授業を担当することになったため出張の時間が取れず(その分メールなどでの構築を開始)、出張は次年度において集中的に行うことにしたため。
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