最終年度は、前年度に引き続いて国内での実地調査を行うとともに、海外での調査も合わせて行い、また数年従事していた日本語日本史教科書の英訳を完成させた。 国内での実地調査では、皇學館大學の関連授業において学生および担当教員との意見交換およびアンケート調査を行い、昨年度までに調査をした語学系の大学と神道系の大学において「英語で日本史」を学び且つ教えることについての認識の違い、授業における工夫等について確認した。
また2月にはカナダのヨーク大学とアメリカのペンシルバニア大学を訪れ、日本学関連の授業にてその授業法を調査するとともに、大学院生の担当するチュートリアルセッションにも参加し、入門的な授業においてどのような工夫をしているのかの意見交換等を行った。 日本国内ではどうしても語学的な側面に偏りがちであるが、その枠が外れた場合何に重きを置くのか、また日米関係において双方の理解や解釈に差が出そうな戦争関係の博物館や政治的な史跡をいくつか訪れ、日本とは異なる視点を示す資料等の収集を行った。 こうした資料は既に文献調査で得られたものを研究の試みとして授業資料に導入しているが、学生の関心は非常に高く、研究プロジェクトのひとつの柱であった「グローバル的な視野」を持たせるだけではなく、その記述に使われる語彙や表記形式を含めることによって、文脈における語彙の使用指導についても非常に有益なものであることが確認できた。例え同じ用語を使っていたとしても、それが使われている時代によっても用語の意味・解釈が変わることもあり、それが歴史そのものの理解へと繋がる。日本史教科書の英訳においては「翻訳注」としてその点の注意事項を付け加えたが、授業においてもこうした指摘をいれることにより「ただ伝わればよい」というだけではなく内容重視の理解へとつなげていくことが出来た。
|