研究課題/領域番号 |
19K00877
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
笠井 千勢 岐阜大学, 地域科学部, 教授 (90352450)
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研究分担者 |
角谷 基文 専修大学, 文化研究科, 特別研究員 (10802796)
中川 恵理 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 特任助教 (20734940)
小池 耕彦 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 助教 (30540611)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 第二言語習得 |
研究実績の概要 |
本研究では第二言語が処理される過程を脳画像を用いて比較することで処理に関与する領域、及び処理に関わる認知負荷を調査することで言語習得のメカニズムを探求する。先行研究では母語処理と第二言語処理に関して「同じ処理が行われる」説と「異なる処理が行われる」という相反する説が報告されてきたため、脳画像を用いてそれぞれの言語処理を可視化する。まず被験者に日本語母語話者と日本語学習者を採用し、日本語の文章に見合った正しい助詞を解答するタスクを課し、両グループの正答率、解答速度、神経基盤を比較検証した。先行研究から、言語処理にはleft Inferior Frontal Gyrus (LIFG)の関与が報告されている。また、Left Inferior Frontal Sulcus (LIFS) がVerbal Working Memory (VWM) を含む認知的な処理に関与することも報告されている。私たちは、学習者が助詞を選択できない背景には、数多くある助詞の中から文脈に適した正しい助詞を選び出すにあたり認知に大きな負荷がかかっていると仮定した。調査の結果、学習者は母語話者に比べ正答率が低く、解答速度も遅かった。つまり、日本語母語話者にとって助詞の産出は簡単である一方、学習者にとっては助詞を産出することが非常に困難であることが明らかになった。神経基盤は、両グループともIFG の関与が認められ母語話者も学習者も同じ領域を使って処理を行うことが明らかになった。一方、学習者グループに特化して活動する領域はIFS でありVWM を使って記憶リソースを駆使して助詞を産出していることが明らかになった。これらの発見により、母語話者も学習者も同じ神経基盤を使って統語処理を行うが、学習者は文法ルールを見つけ出したり、すでに学習した内容に参照しながら答えを見つけ出す作業を行っていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
県を跨ぐ行動が制限されているため実験会場である生理学研究所を訪れることが困難な状態である。そのため第二段階で収集する予定のデータが獲得できていない。また、成果発表を予定していた学会が中止されたり、学会形式が変更されたことにより成果発表の機会を得ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
可能な限りオンラインで打ち合わせを行うなどして対応してく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加する予定であった学会がオンラインで開催されたことにより旅費として計上していた予算が次年度に繰り越された。本年度もすでにいくつかの学会がオンライン開催が実施されることが決定しているため、それらに参加する機器を充実させるために経費を使用する予定である。また、現時点で発表できる成果を国際ジャーナルに投稿するための英文校正等にも使用する予定である。
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