研究課題/領域番号 |
19K00879
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大前 智美 大阪大学, サイバーメディアセンター, 准教授 (00379108)
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研究分担者 |
渡邉 ゆきこ 沖縄大学, 人文学部, 教授 (60320529)
小渡 悟 沖縄国際大学, 産業情報学部, 准教授 (90369207)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ICT活用 / 外国語教育 / 発音教育 / VR / 音声認識 |
研究実績の概要 |
本研究では,「通じる」発音の習得を目指したST Labという合成音声と音声認識機能を有したソフトウェアを開発し,多くの教育機関に提供している。今までの発音教育が個々の教員の主観に頼らなければならなかった難しさと,発音の評価を自動化することに対するハードルの高さ,また学習者自身の発音練習を独習という形で実現することの難しさを解消するためにST Labが受け入れられている。現時点で40の教育機関において約50名の教員,800名を超える学習者がST Labを使用している。言語は中国語,ドイツ語,英語,フランス語,ヒンディー語,韓国語での利用実績がある。 研究2年目には,これまで中国語中心に教材開発を進めてきたが,研究チーム内でドイツ語教材の作成及びドイツ語授業での実践を行った。コロナ禍において大学の授業がオンラインに切り替わった令和2年度には,対面での授業以上に発音教育に困難を感じることとなったが,ST Labを活用したドイツ語基本表現の発音練習を行った結果,音声認識による正答率の低い語彙や表現ほど練習回数を重ね,学習者自身が「通じる」発音になるまで練習を繰り返していることが読み取れた。この結果、前期の最終課題となったドイツ語プレゼンテーションでは,従来の対面による指導をしていた頃よりも「通じる」レベルのドイツ語発音ができた結果となった。 中国語教育での実践においては,令和元年の実践と比較を行った。令和元年は対面授業であり,令和2年度はオンライン授業となり,学習者のモチベーションの維持という点においては多少マイナスの評価はあったが,発音指導の実績としては対面授業と変わらない効果が得られた。 ST Labの開発と並行して,VR空間における言語学習環境の構築を行い,VR環境でのコミュニケーション授業の実践に取り組み始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目となった令和2年度は音声認識ソフトST labの改修と多言語対応した「音読練習」機能を活用し,ドイツ語の授業実践を行った。またST labをPCカンファレンス2020及び日本独文学会ドイツ語教育部会のオンラインイベント「オンライン授業の解説ーリアルタイム方式とオンデマンド方式のコツを伝授します!」にて紹介したところ,研究分担者以外にも複数のドイツ語教員がST labを活用した授業の実践を行った。 中国語では初年度と2年目でのデータを比較分析を行った。初年度は対面授業、2年目には,コロナの影響によるオンライン授業となり,授業形態が違うため全く同条件での比較をすることはできないが,対面授業であるかオンライン授業であるかに関わらず,ST labを使うことにより,発音の学習は効果的に行うことが可能ということがわかった。 VR教材の作成に取り掛かる予定にしていた2年目には,それぞれがVR用にヘッドマウントディスプレイを用意し,いくつものコミュニケーションアプリや教育用アプリの検証を行った。また,学習者が自由に出入りして外国語によるコミュニケーションをとることができるVR空間をMozilla Hubsにより構築し,試用の段階に入った。 以上の点から,研究はおおむね順調に進展しており,3年目となる次年度に最終のシステム改修とVR教材の充実を図る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は現在のところ,おおむね順調に進んでいる。パイロット版だったST labを多言語対応させ,現在では40の教育機関で利用されるまでになった。利用者が増え,教材の言語種も増えたため改修が必要となる部分が生じているため,できるだけ教員や学習者の要望にあった改修を進めていく。 現在は研究代表者と分担者によるドイツ語・中国語による授業実践のデータから効果を検証しているが,今後はアンケート調査により他の教育機関・教員による授業実践でのデータや効果分析を行いたいと考えている。 ラーニングアナリティクスやディスコースアナリティクスなどの手法を用いて、ST labを用いた学習分析も並行して行いたいと考えている。 VR教育については,プロトタイプ版としてMozilla Hubsにおけるコミュニケーション空間を作成し試用に入ったところであり,今後は多くの学習者の環境に適したVR教材の開発を進める。 ST labによる発音練習とその成果を発揮するためのVRコミュニケーション空間での会話実践を行い,従来にない外国語教育環境の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 研究代表者・研究分担者による対面での打ち合わせが行えなく支出が減ったことと、VR機材使用時に使用する衛生布マスク(使用者の汗や化粧などの汚れがVR機材に付着するのを防ぐ)の購入を行わなかったため予定の金額より差額が生じた。 (使用計画) 次年度使用額に関しては令和3年度支出予定の研究成果投稿料、ならびに、研究成果FD開催に加えて支出する予定である。令和2年度はVR機材を用いた実証実験が予定より実施できなかっため、VR機材用衛生布マスクの追加購入等を行わなかった。令和3年度は感染症拡散防止対策を十分に行いつつ実証実験、ならびに、研究成果FDを開催し、計画通りに支出するようにする。
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