研究課題/領域番号 |
19K00888
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研究機関 | 高千穂大学 |
研究代表者 |
松谷 明美 高千穂大学, 人間科学部, 教授 (60459261)
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研究分担者 |
高橋 千佳子 東京純心大学, 看護学部, 教授 (80350528)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 法助動詞 / 生成文法 / 認知言語学 / 言語習得 / 統語論 / 運用論 / 意味論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、英語と日本語のモダリティ(法助動詞)について、認知・運用システム内のコンテクストと表現者の捉え方(視点)等が、ヴォイス(態)や語彙項目の選択において作用し、モダリティを含む文の派生と解釈に関与させるメカニズムを構築し、言語習得のプロセスに活かすことである。 Palmer (1990)は命題内容が真偽に対する表現者の判断を示す①認識的(epistemic)解釈(推量、可能性等)と②根源的 (root) 解釈(義務的(deontic) 解釈(義務や許可)と動的解釈(dynamic)(能力や意思))の多義に分類している。今年度はPalmer(1986)が話者による発話した内容への関与(commitment)の度合い、つまり、表現者(話者)の判断等を示す、認識的解釈の法助動詞について、研究を進めた。認識的解釈の法助動詞と態(とくに受動文)との関連を調査研究した。 具体的には、神尾(1989),久野(1990),高見(2011)等で指摘されている、法助動詞が具現化されていないにも関わらず、主語に対してのaffectednessを示すとされる、日本語受動文における話者による発話に関する判断、感情等認識的解釈はどのようにして構築されるのかという問いを立てた。そして、先行研究のデータや日本語母語話者のデータを、生成文法、機能文法、認知言語学の視点から分析、考察することで、metonymyによって動機づけされるnominalization(柴谷(2018a, 2918b)がVoice PhraseとComplementizer Phrase (CP)に起きること、そしてCPでGrohmann (1999)が提案するように、統語・意味・運用の要素が融合しているExclamation feature(E-素性)が照合されることで、 話者の情緒的含意を可能にしていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の松谷は、法助動詞を含む文と、その文における態との関連について、日本語を中心として分析するとともに、英語、ドイツ語、スペイン語等のデータとも比較対照・分析することで、より普遍的な派生と解釈を生み出すメカニズムを提案した。分担研究者の高橋は英語を中心とした法助動詞を含む文における相の影響について、実証的な研究を進めた。そしてそれぞれが研究成果を論文としてまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
英語のコーパス(BOLT English SMS/Chat等)と日本語のコーパス(読売新聞記事データ集、中納言等)から英語と日本語のモダリティに関するデータを多数抽出し、比較分析を行い、さらに認知言語学、生成文法、機能文法等の側面から考察することで、英語と日本語のモダリティを含む文の派生と解釈のメカニズムにおける類似点と相違点を明らかにしたい。そして、より精密な派生・解釈プロセスを予測し、母語話者に対して実施する調査実験(引き出し生産実験等)を計画し、パイロット実験をすることで、実験デザインを確認し、その後聞き取り調査と検証を実施する予定である。その結果を基に英語と日本語のモダリティの各特徴も説明できるモデルに改良し。法助動詞を含む文の言語習得に役立てられるような、より精密な派生と解釈メカニズムを構築したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本語の母語話者への実験を当初の計画の規模で実施しなかったため、費用が計上されていない。海外での学会発表の機会がなかったため。
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