研究課題/領域番号 |
19K00888
|
研究機関 | 高千穂大学 |
研究代表者 |
松谷 明美 高千穂大学, 人間科学部, 教授 (60459261)
|
研究分担者 |
高橋 千佳子 東京純心大学, 看護学部, 教授 (80350528)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | モダリティ / 第二言語習得 / 認知言語学 / 意味論 / 統語論 |
研究実績の概要 |
本研究は、モダリティを含む文の生産、解釈されるプロセスにおいて、どのように認知と運用システム上の要素が影響を及ぼすかを分析考察し、日本語母語話者による英語の言語習得のプロセスを探ることを目指す。 本年度は日本語を母語とする英語学習者に実施した調査実験の結果を分析した。 ‘deontic must,’ ‘epistemic must,’ ‘deontic have to,’ ‘epistemic have to’の産出について、主に認知言語学の視点から考察した。使用頻度の高さは、‘deontic must’ ’deontic have to’ ‘epistemic must’そして‘epistemic have to’の順番で、‘epistemic have to’の使用頻度は極めて低いという結果が得られた。 具体的には、大学生が書いた英文においても母語話者同様に、‘deontic must’と‘deontic have to’は、obligationまたはrequirementを含意し、‘epistemic must’と‘epistemic have to’を含む英文はlogical necessityを意味していた(Palmer (2012) & Leech (2004)参照)。Hinkel (2009)が提唱するように、エッセイのトピックがこれら4種類の生産頻度に影響するのではないかという見解にたどりついた。また、‘must’が持つoutside authority/irresistible forceというイメージがstrong subjective/imperative forceにつながるという結論になった(Sweetser (1990) & Tyler et al. (2010)参照)。‘have to’については、書き手が事象を客観的にとらえている事が、頻度を低くしたのではないかと推測した。さらに、‘epistemic have to’の使用頻度の低さは、Palmer (2012) や Leech (2004)等の先行研究で述べられているように、‘epistemic have to’は、British Englishではあまり使用されない、American colloquial Englishであるという理由から、学習過程において、日本語を母語とする英語学習者が、‘epistemic have to’を含む英文に触れることが少ないことに起因するのではないかと推察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の中、接触を避けるために、対面の調査実験を設けることが難しかった。多くの制約がある中で、オンラインを使用しながら、調査実験を行い、英語モダリティの‘deontic must,’ ‘epistemic must,’ ‘deontic have to,’ ‘epistemic have to’の産出について、使用の頻度、意味の解釈について、分析と考察を行ったが、研究成果を国際会議、国際学会等で発表する機会がほとんど持てず、フィードバックをもとに、研究内容の修正等を行い、スケジュール通りに進めることが難しかった。
|
今後の研究の推進方策 |
更に研究を推し進めるために、2022年度の研究で取り上げていない、モダリティについて、日本語を母語とする英語学習者が産出する英文を認知言語学、生成文法、機能文法の視点か分析考察する。そして、英語モダリティを含む文の習得プロセスをより詳細に分析考察する。可能であれば、日本語以外の母語とする英語学習者以外の英語モダリティの習得についても調査する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度同様、コロナ禍の制約がある中で、被験者を対象にした調査実験を行うことが非常に難しかった。オンラインを駆使して調査実験を行っても、その成果を発表するために、国際会議、国際学会に行くことが出来なかった。 コロナに対する制限制約が緩和されつつある環境で、更なる調査実験を行い、その成果を海外での会議、学会等で発表し、フィードバックをもとに、研究をより進めて行く予定である。可能であれば、海外での外国語としての英語を学習する大人の学習者(大学生)についても調査を実施したい。
|