言語教育分野における最近の定型言語の研究は、その習得、処理、および習熟の重要性に焦点を当てることが多く、言語教育および学習に対するその意義からますます注目されている。本研究では、言語の本質的な特性を理解するうえで重要な視点として「言語における定型性」に着目しているが、今年度は、それと第二言語習得に関する最新の知見を総合的に検討することに専念した。 今年度得られた知見としては、定型言語が言語学習を促進する上で重要な役割を果たしており、初期段階で特に重要なこと、そして、学習者は、文の構築や意味の伝達の足場として定型表現を頻繁に利用するということである。さらに、豊かなインプット環境で自然な定型言語に最大限触れることが、学習者の言語習得プロセスを向上させるということである。コミュニケーションにおける定型言語の使用が普遍的で重要であるため、定型言語を理解し、効果的に使用することが高い習熟度を目指す言語学習者にとって極めて重要であるという認識のみならず、定型言語自体が言語学習を促進する役割を果たしているという知見は、言語学の今後の発展や実践的な言語教育において重要な示唆を与えるものと考えられる。 さらに、最近の研究によると、定型言語の習得と処理に関わる認知メカニズムが調査されるようになっている。認知理論によれば、定型言語は一般的な言語構造とは異なる方法で貯蔵、保存およびアクセスされるため、その取り出しには異なる神経経路があることが示唆されている。これらの認知プロセスを理解することで、言語教育法の改善につながる可能性があり、定型言語の練習を言語教育カリキュラムに組み込むことの根拠ともなるともいえることがわかった。
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