本研究は、様々な発話意図を含む発話を対象にドイツ語母語話者による発話・知覚と、日本人ドイツ語学習者による発話・知覚の習得のメカニズムを明らかにすることを目的としている。 ドイツ語母語話者の心態詞schonを含む発話において心態詞にアクセントが置かれる場合があるとされるが、アクセントの有無と意味・機能との関係は未解明である。これまでの結果をふまえ、2023年度は「反論」および「留保付肯定」の意図を含む母語話者による発話のschonのアクセントの有無、音声特徴と意味・機能との関係を解明するため、心態詞schonが文末、文中に位置し、様々な動詞から構成される短文の発話に関して生成および知覚面からの分析を行ったところ「留保付肯定」の状況下で心態詞が文末に置かれる短文の発話においては動詞にピッチアクセントが置かれるケースが見られたが、その他の条件では心態詞にアクセントが置かれるケースが多く見られた。以上から、パラ言語情報を含む発話においては一定程度の意味的な要素が関わる一方、音声的要因もアクセントの有無に影響する可能性が示唆された。 さらに2023年度は、本研究期間初年度より収集及び音響分析を行ってきたドイツ語学習者による心態詞schonの発話の生成・知覚の研究成果をとりまとめた。ドイツ語学習者による学習開始直後の発話と、学習から2年経過後の発話においては、文アクセントの位置が大きく異なり、持続時間、アクセント部分のF0の変動幅といった特徴が、ドイツ語母語話者による発話とも類似していた。さらに、学習者の学習開始直後(2019年)および2年後(2021年)の発話に関してドイツ語母語話者による評価実験を行ったところ、学習開始直後の発話と比較し高い評価が得られた。しかし学習者の知覚は学習開始直後と2年後とでは有意差が見られなかった。以上の研究成果を査読付きの学会誌に論文を執筆し投稿した。
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