研究課題/領域番号 |
19K00896
|
研究機関 | 名古屋学芸大学 |
研究代表者 |
鈴木 薫 名古屋学芸大学, ヒューマンケア学部, 教授 (20221319)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | コンピュータ支援学習(CALL) / 英語教育 / 特別支援教育 / 重複障害 / 体感音響振動 / 音声分析 / 協働学習 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
英語音声処理・音韻形成・短期記憶に関する実験授業は、豊橋市立くすのき特別支援学校の英語担当教諭が研究協力者となり、高等部の生徒を対象にして実施した。PCを利用した英語学習を行い、発話調査や筆記調査を定期的に実施して記録し、予定通りにデータを収集した。愛知県立豊橋聾学校と豊橋市立くすのき特別支援学校において、基本英単語の語彙テストを実施し、英語習熟度について調査した。さらに、音声を利用した記憶力テストを英語と日本語で実施し、作業記憶について測定を行った。しかし、調査の途中で、コロナ感染予防のため調査協力校が休校となり、一部のデータが未収集となった。愛知県立豊川特別支援学校・愛知県立豊橋特別支援学校・愛知県立岡崎特別支援学校において、授業見学および教員からの聴き取り調査を行っている。 海外調査として、8月にニュージーランドのKelston Deaf Education Centre(KDEC)・Kelston Girls’ College・Kelston Boys’ High School・Kelston Intermediate School・Kelston Primary School・Ormiston Senior College・Ormiston Junior College・Ormiston Primary Schoolを訪問し、授業見学およびスタッフとの情報交換を行った。KDECにおける作業記憶の調査の実施について許諾を得た。さらに、1月には研究協力者であるKDECのスタッフが愛知県立豊橋聾学校を訪問し、特別授業を行った。特別支援学校の間の国際ネットワークを強化するため、担当者間の情報交換を促進し、KDECと愛知県立豊橋聾学校で、インターネットを利用した交流授業を企画した。 本研究課題のパイロット調査に関して、7月に日本言語音声学会第1回全国大会にて研究発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教育現場の調査は、ほぼ予定通りに進んでいる。国内では、実験調査に加えて、新たな教育現場での授業見学および教員からの聴き取り調査も行っている。コロナ感染予防のため調査協力校が休校となり、作業記憶のデータの一部が未収集となっているが、2020年度も継続調査が可能な調査協力者を対象として、収集する予定である。 海外では、ニュージーランドの特別支援教育機関を訪問し、2020年度以降に、現在国内の特別支援学校で実施している作業記憶に関する調査を実施する許諾を得ている。さらに、オーストラリアの特別支援学校5校(Sunnybank State Special School・Nursery Road Special School・Kuraby Special School・Logan City Special School・Calamvale Special School)との連絡調整を進めている。スイスの教育現場への訪問調査についても、現地調査協力者との連絡調整を進めている。 特別支援学校間のインターネットを利用した国際交流授業について、2020年度より実施可能な段階にある。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度に実施した国内の特別支援学校の調査協力者のうち、高等部1年の生徒に ついては、3年間の追跡調査を実施するため、同様の調査を2020年度以降も継続して実施し、2019年度のデータとの相違点を見出すことで、ICTを利用した英語学習による効果と、障害の種類や程度、作業記憶などとの関連を明らかにする。作業記憶の調査では、英語と日本語だけでなく、手話についてもデータ収集を進める。音声変化を伴う英語定型表現の聴き取りテストと、一部の文字が欠落した基本単語や一部の単語が欠落した定型表現の提示後に欠落した情報を補って発話するテストも実施する。英語学習が進む段階に合わせて調査を実施し、経過観察によって、英語の音声や音韻特性の理解および言語情報補填能力における変化を明らかにする。 2020年度中にニュージーランドのKelston Deaf Education Centreにて、英語とニュージーランド手話に関する作業記憶の調査を実施する予定である。オーストラリアやスイスにおける実態調査も計画している。しかし、これらの海外調査は、コロナ感染拡大状況によっては、2021年度以降になる可能性もある。 収集済みの実験授業および作業記憶に関する数値データの分析を進める。収集した音声アウトプットの変化は音声分析ソフトによって解析する。文字アウトプットのエラー分析は事例ごとに取り纏め、障害の状況との関連を探る。 脳科学や遺伝学の文献調査に加えて、関連分野の学会や研究会に参加するとともに、専門家からの聴き取り調査を行う。 収集したデータを随時取りまとめて、本研究課題が関連する学会で研究発表を行い、学会誌に論文を投稿する。
|