研究課題
多読が初級者の英語運用能力を高めるのは英語情報処理の流暢性が高まるからとの仮説を検証すべく、5-7年継続の長期多読プログラムに在籍する高専生の読書履歴と英語運用能力との関係を分析した。TOEIC370点未満の初級者の英語力はTOEICでは測定できなかったため、流暢性を測定する評価指標として、ディクテーション試験とリーディング試験を用いた。(内容理解を問題としない)低レベルの流暢性はディクテーション試験で、また内容理解を伴う流暢性は読書時間を(毎分100語以上に)制限した初見英文のリーディング試験で測定できた。ディクテーション試験得点が先行して上昇し、その後リーディング試験得点も向上する学生が多く、高専生には低レベルの流暢性向上を先行させる指導が有効との示唆を得た。流暢性が向上すると、やさしい英文を(和訳を経ずに、また無理せずに)理解できるようになる。その状態で理解可能な入力(Comprehensible Input)を一定期間続けると英語力の向上をTOEICでも測定できるようになる。多読授業(週1回通年)を6-7年続け、累積200万語読んだ高専生のTOEIC平均点は600点であり、ゆったりした多読で着実に英語力を向上できている。流暢性が高まると、(やさしい英文であれば)長時間読んでも疲れなくなるため、読書を楽しめることも長期継続を支えている要因である。初学者の流暢性を高める学習活動として、朗読を聴きながら英文を読む、聴き読みに注目した。本研究ではその効果を確認できていないが、やさしい英文テキストを、やや速めの朗読速度で聴き読みすることが有望と考えている。初めて行うときは、最初は毎分80語程度のゆっくり朗読で始め、慣れてきたら(英文レベルを上げるのではなく)徐々に朗読速度を高め(毎分100-150語)、毎分150語程度の朗読速度に慣れてから、英文レベルを上げていく手順である。
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Language, Individual & Society
巻: 16 ページ: 1-9