研究課題/領域番号 |
19K00902
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研究機関 | 鹿児島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
坂元 真理子 鹿児島工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (60370061)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リーダビリティツール / 小学校英語教科書 / 新学習指導要領 / 教科書分析 |
研究実績の概要 |
研究の取り掛かりとしてまず、令和2年度から新学習指導要領の下で展開された小学校英語で使用される検定教科書7種類の本文と音声スクリプトのデジタル化を行った。デジタル化されたデータを従来のリーダビリティツール(OFYL)で分析し、従来の英語教科書や新課程の英語教科書同士の比較を行った。その結果、新学習指導要領に基づいて作成された小学校英語教科書は従来の英語教科書の小学5年生から中学2年生の学習範囲に対応する難易度であることや、学年や各課では難易度が順を追って高くなっているわけではないことが分かった。また、各科の新出単語の種類や難易度から、全ての教科書は「ノーショナル・シラバス」つまり、英語の実際の使用場面を想定して作成されたシラバスに基づいた内容を想起させるものであることが明らかとなった。ノーショナル・シラバス下の英語教科書では学習者が遭遇する可能性の高い場面が選ばれているため、現実世界での実践的な英語使用により近い言語内容を学ぶことが出来るがその反面、語句や文法の難易度が統制されないという特徴がある。新しい小学校英語教科書ではどの出版社の教科書も、自己表現の上で頻度が高くなることが想定される一方で文字数の多さや発音の難しさの点で学習者にとって難易度の高い語や、助動詞や過去形、進行形といった今まで中学校の英語教科書で出現していた文法が使用されており、これらもノーショナル・シラバスの特徴を踏まえていると言える。また、その中でも1社の教科書のみが他の教科書に比べて文法表現に配慮している点があることが分かった。 AIを使用したリーダビリティツールの開発としては、機械学習を取り入れた開発を試みることとした。新出語句の選定基準が上記のように大幅に変わっていることを受け、辞書項目は従来のものの流用でなくノーショナル・シラバスを踏まえた新しいものを用意する必要があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定であった、検定英語教科書7種類の本文と音声スクリプトのデジタル化を終え、従来のリーダビリティツールとの照合のためにこれを用いた分析と、コレスポンデンス分析を行った。デジタル化は研究開始当初、手入力を考え人件費を計上していたが、出版社によってテキストデータを販売していることが分かり、正確さと迅速さの点からできるだけこれを使用することとした。また、機械学習の観点からは、リーダビリティツールの説明変数に大きく関連するツール内の辞書も新課程を反映したものにすべきだということになり、分析結果から明らかとなった「ノーショナル・シラバス(英語の使用場面に即したシラバス)」を反映させるような辞書を探すこととなった。成果の発表については、世界的なコロナウィルス蔓延の影響により、当初予定していた国際学会で発表することができなかった。そのため、年度当初に計上していた旅費を消化することができなかった。また、小学校の新学習指導要領や英語教科書の内容が予想していたよりも大幅に改訂されていたことが明らかとなったため、令和3年度から使用が開始される中学校の英語教科書や新学習指導要領との整合性を取る必要があるとの結論に達し、小学校英語教科書に関する論文については令和3年度以降に投稿することとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としてはまず、令和3年度は中学校、令和4年度は高等学校の英語検定教科書のデジタル化を行い、小学校の英語検定教科書との整合性について分析を行う。その過程において、従来の指導要領に基づく英語教科書の内容や文法事項について知識のある英語教育の専門家や機械学習の専門家と打ち合わせを行うために、各専門家が教科書を一式手元に有していることが必要となる。デジタル化のためには令和2年度同様、出版社が提供しているテキストデータをできるだけ使用することを予定している。一方、機械学習を基としたリーダビリティツールの開発のために、ツールで使用するのに適切な辞書の探索を行う。中学校と高校の英語教科書を実際に分析して小学校からの縦断的なつながりを意識していく必要性はあるが、現状での研究結果として観察できたノーショナル・シラバスに基づいた教科書構成を踏まえ、場面的な分類を反映した辞書かそれに類似したものについての調査を行う。また、令和3年度もコロナウィルスが世界的に猛威を奮い続けることを想定し、オンラインでの国際学会や電子ジャーナル等への投稿を模索する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
小学校英語教科書のデジタル化は研究開始当初、手入力を考え人件費を計上していたが、出版社によってテキストデータを販売していることが分かり、正確さと迅速さの点から手入力に替えてできるだけこれを使用することとした。そのため当初予定していた人件費が掛からなかった。また、世界的なコロナウィルス蔓延の影響により、当初予定していた国際学会で発表することができなかったため、当初予定していた旅費を執行することができなかった。
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