研究課題/領域番号 |
19K00903
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小野 雄一 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70280352)
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研究分担者 |
仲谷 佳恵 東京工業大学, 教育革新センター, 特任講師 (70771864)
石井 雄隆 千葉大学, 教育学部, 准教授 (90756545)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リスニング学習方略 / オンライン学習行動 / 習熟度 / ラーニングアナリティックス |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で昨年度も同様に通常予定しているカリキュラム編成を変更しなければならなかったため,大規模な実証実験が実施できなかった。そのような中ではあったが,昨年度実施したチエル社が提供するプラットフォームを利用したリスニング学習(ディクテーション課題)において学習者のログデータから学習方略に関する構成概念を予測できるかという研究(Ono & Aizawa, 2020)のフォローアップを実施した(Ono, 2021)。 今回の研究では,前回と同様トップダウン処理とボトムアップ処理の両方の活性化を伴う活動であるディクテーションタスクをチエル社のプラットフォームを用いて実施した。前回の研究で,学習方略とオンライン学習行動の関連性について検討したが,本研究では,そのような要因が一般的な習熟度とどのような関係性が認められるのかに注目した。具体的には,学習行動,学習方略,習熟度に関してどのように分類ができ,それぞれのクラスターの特徴はどのようなものか,そして,学習行動と学習方略の関係性はどのようなものか,という2つの研究課題を設定した。学習行動については,オンライン上のログデータから,「再生」,「戻し」,「2秒前」,「2秒後」,「速度調整」,「繰り返し再生」のデータを利用した。学習方略についてNix(2016)のEFL Listening Strategy Inventory (ELLSI)を利用した。 クラスター分析の結果,今回の学習者は4つのクラスターに分類されることがわかった。時間をかけて活動する習熟度が低い群,時間をそれほどかない習熟度が高い群,オンライン機能を駆使する中位群,その他,という具合である。また,習熟度を従属変数とした決定木分析を行なった結果,上位の接点では学習方略に関する要因が出現するなど,学習方略の位置付けが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究はある程度実証実験のデータをやや大規模に取得し,分析・評価に関する研究に舵を切る予定であったが,Covid-19のもとでのオンライン教育の実施の中で,多様なシステムの利用や,リアルタイムによるきめの細かな指示を行うことが難しく,また,学習者のPC環境,通信環境が整えることもできず,可能な範囲での小規模実験しか実施できなかった。昨年度と同様に,今年度も,無視ができないのは,オンライン学習疲れ(fatigue)が大いに蓄積されているため,その中でも本研究の取り組みの中で得られたデータの信頼性の問題も考えられ,研究倫理上の問題も生じていた。 そのような中,小規模のデータでではあるが,今年度は,学習行動,学習方略,そして習熟度の関係性について踏み込んだ分析を実施した。今回の分析が翌年度以降の基盤となったと考えられる。 しかし,今年度は学習者もだんだんとオンライン授業に慣れてきており,また,一部ではあるが対面授業が再開されてきているため,情緒要因,動機付け要因は以前よりは安定してきているように感じられる。また,学習環境,特に通信の快適性やデバイスなどの要因についてはさらに向上している。よって,当初の計画を維持しつつも本研究を実施している状況を考慮するような形で研究を行っていく必要があるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年の今年は,やや大規模な実証実験と論文投稿を目指していきたいと考えている。その際には,実験協力者に無理のない範囲で,通常の授業の中で十分実施可能な中で実験を進めていく必要性が大きくなっていると考えている。また,今年度の研究で発見した学習者の動機付け要因のうち,Covid-19の状況において学習者がどのように課題に取り組んでいるのか,自己調整学習の観点からの検証も必要になってきていると気づき始めている。時期課題に向けた関連基礎研究としての調査も合わせて行っていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の影響から昨年度までに大規模実験と学会発表および論文化が十分に取り組めなかったために次年度使用額が発生した。学会発表,論文化,英文校閲などを主に使用していきたい。
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