最終年度は、ある地方国立大学の農学部獣医学科に所属する学生を対象として質問紙調査とインタビュー調査を行い、学生のニーズの特定を試みた。質問紙調査は、1~6年生の計57名に行い、ニーズの学年横断的傾向の把握を試みた。インタビュー調査は、6年生の計7名に行い、最終学年から俯瞰して見た大学生活全体の英語ニーズについて尋ねた。質問紙調査からは、全学年を通じて「専門に特化した英語授業」への強い要望が見られ、「英語の授業で使ってほしい教材」でも「獣医(学)に関する教材」に最も強い要望が見られた。「身につけたい英語のスキル」に関しては、「獣医学分野の論文が読める読解力」が最も際立っていた。また、学年間の差異が見られる項目もあり、例えば「スピーキング」や「ディスカッション・ディベート」はより上位学年でニーズが高まる傾向が見られた。またインタビュー調査からは、4年次の研究室配属の時点で、学生の英語環境が劇的に変化するケースが少なくないことが分かった。英語文献を読むだけでなく、多くの研究室で留学生とのコミュニケーションでも英語を使う機会が多いことが分かった。これらのことから、1・2年生で終わってしまう現行英語カリキュラムの限界と、特殊性のニーズに対応できる大学側のリソースの課題が明らかになった。ニーズ分析の結果は、国内学会で発表を行い、その後公刊された学会論文集でも報告を行った。 これらの分析を基に、ESPにおける特殊性に関する問題、大学基礎教育レベルでのESPの方向性と英語カリキュラムの可能性、教材開発の可能性についての考察を行った。
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