研究課題/領域番号 |
19K00915
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
近藤 隆子 静岡県立大学, 国際関係学部, 助教 (60448701)
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研究分担者 |
白畑 知彦 静岡大学, 教育学部, 教授 (50206299)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 第二言語習得 / 英語学習 / アクティブラーニング / 英語指導法の開発 / 明示的文法指導の効果 / 学習者の気づき / 動詞の項構造の習得 / 発話データ |
研究実績の概要 |
本研究では、日本語を母語とする英語学習者(JLEs)の英語能力をより効果的に伸ばすには、学習者に「自身の誤りに気づかせることが有効である」という仮説の下、その仮説が実際にどれほど有効であるかを、発話データを収集し実証的に調査することを目的としている。具体的には、気づきを促す指導法の有効性の範囲とその限界を、JLEsの動詞の項構造の習得を中心に分析する。 初年度はまず、過去に明示的文法指導の効果を検証した自動詞と他動詞を再度調査項目として、今までの紙面テストをもとに、これらの動詞の項構造の習得におけるJLEsの誤りに関する先行研究の結果分析と誤りの傾向調査を行った。その結果をもとに、発話実験の内容と手順を決定した。実験では、大学生に、与えられた動詞を適切な形にして英文を瞬時に作成・発話してもらい、それを学生自身のスマートフォンに録音し、その発話データを書き起こし、誤りの分析をしてもらった。その結果、発話データには非常に多くの項構造に関する誤りが含まれていたが、学生個人の分析作業を通じて、ほとんとの誤りに気づくことができた。学生個人またはクラスメートとの協同学習を通しても気づかない誤りに関しては、実験者が授業内で簡単な説明をした。その後、同じテストを2回実施し、一度気づいた誤りが一定期間持続可能かどうか調査した。最後に、学習者に、本実験を通して何に気づき、また、なぜ誤りをしなくなったかについて自分自身で分析してもらった。その結果、自動詞と他動詞の項構造の誤りに関しては、ほとんどの場合、学習者は自分で誤りに気づくことが可能で、一度気づき、適切な言語形式を理解した動詞に関しては、その後も発話時に項構造を意識することで適切に使用できることがわかった。数は少ないが、学習者自身では気づかない誤り(項構造を完全に誤って理解している動詞)については、簡単な指導をする必要があることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、まず、自動詞と他動詞の項構造の習得におけるJLEsの誤りに関する先行研究の結果を分析し、誤りの傾向調査を行った。その一環として、自動詞と他動詞の習得における明示的文法指導の効果について、全国英語教育学会で発表、全国英語教育学会紀要への投稿、また、研究分担者(白畑知彦)が主で「日本語母語話者による英語非対格動詞の過剰受動化現象に関する考察」についてまとめ『第二言語習得研究モノグラフシリーズ4』に投稿した。 次に、上記の分析をもとに、自動詞と他動詞の項構造の習得を調査する発話実験の内容と手順を決定し、担当授業で実験を行った。現在、実験結果の分析をし、明らかになった問題点・疑問点について検証し、改善した追実験を準備している。したがって、研究はほぼ研究計画通りに進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度の実験から明らかになった問題点・疑問点について改善した自動詞と他動詞の追実験に加えて、自他交替可能動詞(break, close, melt, openなど)に焦点を当てた実験を行う予定である。具体的には、まず前期で、自動詞と他動詞に関する追実験を行う。同時に、自他交替可能動詞に関する実験の準備をする。自動詞と他動詞の項構造の習得に関しては、研究代表者、研究分担者共にこれまで多くの実験を行なってきたため、実験材料、データなど豊富にあったが、自他交替可能動詞に関しては、文脈による項構造の交替可能性などの問題があるため、先行研究などを精査し、慎重に実験文を作成する必要がある。そして、後期に、自他交替可能動詞に関する実験を行う。2月から3月にかけて、2年目の2つの実験の結果の分析と学会発表準備・論文作成を開始する。
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