日本語を母語とする人の英語発音訓練の視覚的支援に加え、調音動作を担う筋肉の使い方を組み込んだ教示法を構築するため、下顎を含めた口唇運動を測定するための顔領域特徴量を抽出して口唇周りの筋活動と口唇運動、調音時の口腔内舌面形状の関係を解析した。口唇運動を担う筋肉の筋活動を表面筋電位信号により推定し、音声フォルマントの変化との相関を解析した。口輪筋・咬筋・舌骨舌筋の筋活動量とフォルマントとの関係の分析より、これらの筋肉が発音教示における筋活動からの口唇運動モデルの有力な入力信号候補であることが示唆された。 下顎運動を含めた口唇運動を測定するため、調音時MR画像からの顔領域の特徴点を抽出し、特徴点間距離と音声フォルマントとの相関関係を解析して口唇運動の顔領域測定点を抽出した。これに基づき、モーションキャプチャにより特顔領域特徴点を計測し音声フォルマントとの関係を検証し、抽出された顔領域特徴点の有効性を検証した。従来の研究より、調音時口唇動作では口唇の開口度に加え口唇突出動作が舌面最高点の口腔内前後位置の移動に関係していることが判明しているため、フォルマントと声道断面積関数を用いることにより口唇突出時の舌形状の推定がMR画像から抽出される舌形状との一致度が向上することを確認し、口唇突出を担う口輪筋の重要性が示唆されるとともに、音声信号からの舌形状を推定する数理モデルが構築できた。音声信号から推定されるフォルマント、モーションキャプチャにより計測された口唇運動と表情筋活動量を重回帰分析することにより、表情筋を意識させる訓練教示法に寄与する筋肉の候補選別が可能となった。
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