パーソナリティはこれまで心理学の一領域として発展してきたが、近年は第二言語習得分野でも学習者個人を包括的に理解する手段として注目が集まっている。パーソナリティ研究では法則定立的および個性記述的アプローチの異なる視点から研究が行われてきたが、両者を包括する理論的枠組みとして、ニュービッグファイブモデルが大きな注目を集めている。このモデルでは、個人のパーソナリティをビッグファイブ性格特性、特徴的な適応、ナラティブ・アイデンティティの3つのレベルから理解する。 本研究ではニュービッグファイブモデルを用いて、英語学習者のパーソナリティを記述する3つの側面と英語力の関係について調査を行った。具体的には以下の点について明らかにする。 a) 英語学習者の性格特性(レベル1)と動機づけ(レベル2)はどのように関係しているのか。 b) 英語学習者が書いたナラティブ(レベル3)はどのように類型化できるか。また、個々のナラティブの特徴(複雑性など)は、性格特性および動機づけとどのように関係しているのか。 c) 性格特性(レベル1)、動機づけ(レベル2)、ナラティブ(レベル3)の特徴と英語力はどのように関係するのか。 2022年度は日本の大学で英語を専攻する学生約150名から採取したデータのうち、レベル3のナラティブ・ライティングの分析を中心に行った。具体的には、McAdams et al. (2004)で使用された分類をもとに、MAXQDAを用いて150件の英語学習ナラティブのコード化を行った。
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