本研究は、音声対話型CALLシステムの高精度化のために、言語運用能力の低い参加者は運用能力の高い参加者の表現を借用する傾向があるという現象を利用して、CALLへの自然な形で発話制限を行う手法の導入を目的している。このため、複数の会話エージェントと学習者とのストーリー性のある会話で 、学習者が会話エージェント間の会話の発話表現を学び、その表現を借用するように誘導して、自然と制限された学習者の表現の的確な認識を実現し、発話表現の誤りの指摘を行う音声対話型CALLシステムであるJoining-in-typeのCALLの実現を目標とする。 この目標実現のために、Joining-in-typeのCALLシステムを模擬したシステムとして、教師を模したロボットR1と生徒を模したロボットR2から構成されるシステムを開発し、25名の被験者に対して6日間の学習期間でどの程度の学習効果が見込めるかを推定する実験を実施した結果、ロボットR1とR2との会話に続いて、学習者にR2への質問に類似した質問を2度行うことにより、学習者がR2の表現形式に類似した適切な表現で応答する割合が大きく向上する 等、その効果を確認した。 更に本提案手法よる訓練効果を従来主に使用されているリピーティングによる訓練を22名の被験者で比較した結果、訓練直後の効果に関しては両者に差異は認められなかったが、訓練終了後日数を経て行った定着度試験においては、Joining-in-typeのCALLシステムにより訓練を行った被験者の方が、従来のリピーティングによる訓練を行った被験者と比較して定着度が高い傾向が示された。本提案方式による訓練の際の被験者の処理水準の方がリピーティングによる訓練の場合より深いと想定されることに起因して定着度が高いと想定される。なお、被験者の数や被験者の能力分布等の違いにより有意差の確認には至っていない。
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