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2022 年度 実施状況報告書

東アジア相互認識の近世的淵源

研究課題

研究課題/領域番号 19K00933
研究機関千葉大学

研究代表者

山田 賢  千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (90230482)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード齋藤拙堂 / 皇国 / 革命
研究実績の概要

幕末の儒者、齋藤拙堂の漢文著作である『拙堂文集』、ならびに『経世文編抄』批語を精読することで、とくに「革命」に関する認識を通して、拙堂の中国認識について検討した。拙堂にとって、易姓革命は「忠誠」というモラルの否定、ないし少なくとも「忠誠」を脅かす危機であると認識されていた。それに対して、一貫した揺るぎなき「忠誠」によって特徴付けられる「皇国」=日本の伝統の価値が称揚されることになる。このような観点から見るならば、王朝がたびたび革命によって交替した中国の歴史には、いわば反面教師としての学びしかないと考えられていた。幕末を生きた拙堂にとって、もはや中国は批判的な学びの対象としてしか意識されていなかったということになる。
ただし、だからと言って、拙堂が歴代中国王朝の聖王をすべて否定的に評価していたというわけでもない。たとえば殷周革命については、彼は以下のような論理によって周の文王・武王を擁護、ないし正統化しようとする。拙堂は、周の文王・武王がもともと殷王朝の「臣下」ではなかったという説を支持することで、殷周革命という歴史認識を否定する。はじめから「臣下」ではなかったとするならば、それは「主」である殷を弑逆した「革命」には当たらない。拙堂はこのような論理によって、中国古代の聖王の時代を「救済」するのである。
こうした結論から導かれる次の課題は、幕末の儒者による「革命」認識であり、そのフィルターを通して認識される「中国」なのであると言えよう。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究期間を通して収集した文献の精査と分析は順調に進展したものの、当該年度においては本来中国に渡航しての資料調査と、中国現地での研究交流を実施して最終成果を取りまとめる予定であった。しかしながら、予想よりも長引いたコロナの影響によって、上記のような中国での調査と研究交流を断念せざるを得なかったためである。

今後の研究の推進方策

中国への渡航による現地資料調査と研究交流を実施することで、研究成果の最終的な取りまとめを行う。ただし、中国の研究協力者、ならびにその所属する研究機関からの招聘とビザの取得が叶わないことも考慮しつつ、中国の研究協力者を日本に招聘してシンポジウムを開催することも視野に入れている。

次年度使用額が生じた理由

当年度は研究の最終的な取りまとめに向けて、中国上海図書館等における資料調査と、浙江工商大学日本文化研究所における研究交流会を実施する予定であったが、受け入れの許可が出なかったため、これらを断念し、次年度実施としたためである。

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公開日: 2023-12-25  

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