研究課題/領域番号 |
19K00934
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷 昭佳 東京大学, 史料編纂所, 技術専門職員 (70532670)
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研究分担者 |
保谷 徹 東京大学, 史料編纂所, 教授 (60195518)
箱石 大 東京大学, 史料編纂所, 教授 (60251477)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 写真史 / 日本史 / 古写真 / 画像保存 / 文化財写真 / 画像史料 / 史料研究 / 古写真史料学 |
研究実績の概要 |
2021年度も前年度に引き続きコロナウィルスの感染拡大の影響を受け、当初予定していた海外機関に点在する幕末明治初期写真史料の調査、国内に所在する写真原板を対象にした高精細デジタル画像化のための現地調査などをおこなうことが困難な状況となった。そのため、当初の計画を変更せざるを得なかったが、国内での活動を中心にして以下の研究と成果の公表をおこなった。 1)新たに寄贈を受けた、1876年のフィラデルフィア万博に参加した日本人が現地に持ち込んだ日本関係ガラス原板写真(161点)の目録作成と原板の状態調査をおこなった。同時に高精細デジタルカメラによるデジタル画像化をはかったうえで保存処置を施した。2)鶏卵紙の復原調査:高知県立紙産業技術センターに出張し、19世紀の鶏卵紙プリント原紙の組成分析と復原紙製作に関する調査打ち合わせをおこなった。3)横山松三郎関係写真史料調査:箱館・高田屋伝来の横山松三郎・松蔵兄弟の古写真史料(個人蔵)のうち、写真油絵の制作工程についての調査をおこない、写真油絵の復原に着手した。4)菊池海荘関係古写真資料の展示:菊池海荘の出身地である和歌山県湯浅町の地域交流センター(2022年3月21日)において、デジタル化した画像データを基に菊池家旧蔵の古写真資料の展示および講演「菊池海荘と菊池(堀内)家史料」を研究分担者の保谷徹がおこない、研究の成果を一般に公表した。5)その他:これまでの研究成果から「高精細画像から紐解く幕末明治初期の日本」と題する講演を愛媛県歴史文化博物館の多目的ホール(2021年11月21日)おいて、研究代表者の谷昭佳がおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題である幕末明治初期ガラス原板写真の史料学研究を推し進めるためには、国内外に点在する原資料に対する調査が必要不可欠であり、所蔵先への出張調査が求められるものとなる。しかしながら、前年度に引き続き新型コロナウィルスの感染拡大による影響から、国内外で予定していた大半の現地調査を中止せざるを得ない状況となったことが、研究の進捗を遅らせている主な原因としてあげられる。 一方で、新たな研究素材として海外から受け入れた日本関係写真のガラス原板について、高精細デジタル画像化と目録作成および保存処置を進めるなどの成果を得ている。また、NHKBS「フランスで新発見!幕末ニッポンの秘宝―将軍からの贈り物」の放映に対して、ガラス原板写真から製作したデジタル画像データの提供をおこなうなどし、広く一般への研究の発信をはかった。
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今後の研究の推進方策 |
国内所在の資料調査では、昨年度コロナ感染拡大の影響から中止となった高知県下と三重県下でのガラス原板写真の現地調査から先ず取り掛かる。これに加えて、新たに広島県下で発見されたガラス原板写真のコレクションについての調査に着手する予定である。これらについては、既に資料の所蔵先との調査に向けた話し合いも進んでおり、今年度の前半に着実に調査をおこない、その後の分析作業につなげたいと考えている。 また前年度から継続中である横山松三郎関係写真史料の調査研究の成果に基づき、明治初期の日本独自の特殊技法である写真油絵について、保存・修復分野の専門家からの協力を得て写真作品の復原を試みる予定である。既に作品の復原制作に着手しており、研究の内容とともに今年度開催される国内外の学会等での公表を目指している。 海外資料では、研究期間1年目にコロナ感染拡大により急遽中止となった、イタリア国内に点在する幕末のイタリア使節団蒐集日本関係古写真の調査再開をはかる。その他、イギリス国内で収集した日本関係古写真の高精細デジタルデータの分析をさらに推し進めると同時に、新たに明らかとなった課題解決のため現地での補充調査をおこなう予定である。 これらの国内外における出所・伝来が確かなガラス原板写真を中心とする古写真調査から得ることができる、様々なモノとしての写真情報と高精細デジタル画像などによる映像情報を基にして、信憑性の高い歴史資料としての古写真の定義を明確にする写真史料学の構築をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に続きコロナの感染拡大による影響から、海外の資料所蔵先での現地調査がおこなえなかったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。また国内で予定していた調査のうちの2件について、急激なコロナ感染拡大によって急遽中止とせざるを得ない状況となったことも大きく影響している。 次年度には、前年度までに予定したいた調査を着実に実施していく予定である。進捗が遅れている研究のペースアップを図るため、前年度までの計画よりも1度の調査に関わる人員の増強と調査日数を増やすことを計画しており、そのための経費として使用を計画している。
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