研究課題/領域番号 |
19K00940
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
滝川 祐子 香川大学, 農学部, 協力研究員 (40532932)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大黒屋光太夫 / 18世紀後半 / 東西交流史 / 対日通商交渉 / マカートニー / イギリス / ロシア |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、18世紀後半から18世紀末にかけて、いわゆる鎖国政策下の日本をとりまく西欧の対日政策を明らかにすることである。この時代に、日本が知のグローバル化に組み込まれたプロセスを、主に18世紀後半の西欧の博物学的関心と国際関係を視点に入れ、研究対象資料を精査することで明らかにする。 研究の初年度として、まずは一次資料を閲覧し、情報を収集するため、次の研究機関を訪問した。1)イギリス:ベルファスト、北アイルランド公文書館にてマカートニー使節関係の文書を閲覧;ロンドン、大英図書館にてマカートニー使節関係の文書、イギリス東インド会社関係文書等を閲覧;オックスフォード、オックスフォード大学ボードリアン図書館にてマカートニー使節関係の文書を閲覧。2)ドイツ:ハノーファー、シュロスヘレンハウゼン博物館にてハノーファー朝関係資料見学;ゲッチンゲン、ゲッチンゲン大学図書館にてアッシュ・コレクションのうち、大黒屋光太夫将来の日本地図、書籍、書簡などの関係資料を閲覧、画像資料等の収集;ボーフム、ボーフム大学にて日本研究者と意見交換。3)日本国内:東京、東洋文庫ライブラリにてマカートニー関係の書簡、文書類を閲覧、情報の収集。 本研究に関係する報告を行い、同時代の研究テーマを持つ研究者と情報交換・情報共有するため、次の国際学会に参加し、口頭発表を行った:イギリス、北アイルランド、クイーンズ大学にて開催されたScientiae学会参加。主に博物学者間の書簡から,本研究の対象である18世紀末の科学者間のネットワークを再現した研究成果について発表した。 この他、本研究の背景について理解を深めるため、先行研究に関する文献を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、ほぼ計画通りに研究を実施することができたので、おおむね順調に進展している、と自己評価した。その理由は以下の通りである。まず、研究の初年度にイギリスとドイツを訪問し、研究の中心となる在外資料を閲覧・情報収集したことで研究の基盤を築くことができた。次に初年度に渡欧したことで、来年度以降、訪問調査が必要である機関や資料、また初年度の訪問先にあった別の関連資料の存在に気づき、再度の訪問が必要であることなど、課題を具体的に明らかにすることができた。またドイツのゲッチンゲン大学図書館訪問を通じて、近い研究テーマや同じ資料に関心を持つフランス人の研究者と情報交換することができた。さらに、この研究者を通じて2020年5月4~6日にパリのフランス国立社会科学高等研究院(EHESS: Ecole des hautes etudes en sciences sociales)で開催される東アジアの地図に関するワークショップ “Methods of Map Analysis and Their Application to the History of East Asian Cartography”に参加することとなった。またそのワークショップの後にフランスの研究者らと別途、大黒屋光太夫日本図等に関する意見交換をする機会を設けていただくことになった。ワークショップの後は、イギリス等を訪問・長めの短期滞在を行い、在欧資料をさらに調査する予定を立てている。(2020年4月の時点でコロナウイルスの感染拡大により、パリのワークショップは延期、2020年度の渡欧計画は保留となり、大幅見直しが必要である)
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今後の研究の推進方策 |
初年度末には、次年度の研究計画として、得られた成果の一部を口頭にて学会で発表することと、初年度の研究を通じて明らかになった次の課題や必要な一次資料を閲覧するという目標を立てた。また2020年度は2度の渡欧を計画し、国際学会・ワークショップ参加と現地調査を同時に実施する予定であった。しかし、コロナウイルス感染拡大により、2020年5月上旬開催予定であったパリのワークショップは期日不明の延期となり、渡欧と現地調査も延期が決定した。また当初2020年8月末から9月にイタリアで開催予定の学会はオンライン開催となったため、同じパネル参加者との相談の結果、2021年に開催される別の科学史学会に振り替えて参加することになった。現在は、状況が改善し、延期されたワークショップが開催となる日に備え、研究報告資料をまとめている。また次の訪問予定機関の資料のうち、デジタル資料の請求が可能であれば先に取り寄せるなど、国内で先に実施可能な準備を行っている。 現在の状況では、2020年度の渡欧が可能となるかどうか、まったく見通しが立たない。よって、もし2020年度の渡欧が難しい場合には、これまでに得られた資料の分析を行い、明らかになった範囲で論文発表を行いたい。また本研究に必須となる一次資料について、可能な限りデジタル画像などを注文し、渡欧が不可能であってもそれを補うべく調査研究を継続し、進展させたいと考えている。
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