研究課題/領域番号 |
19K00941
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研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
中地 美枝 北星学園大学, 文学部, 准教授 (90567067)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 世界人口会議 / ソビエト / 社会主義 / 家族計画 / 冷戦 |
研究実績の概要 |
当該研究の初年度となる2019年度はニューヨークの国際連合の史料館で史料収集を行った。具体的には1974年世界人口会議のファイル(S-1935)であるが、このファイルには会議の運営事務局長を務めたラルフ・タウンレーと準備・運営を共に担った国連経済社会部門の史料が、1)1973年から始まる準備期間、2)1974年の8月19日から30日までの会議の開催期間、3)開催後から1979年までの三つの期間に分けられて収められている。今回は1)の準備期間の史料の一部を閲覧した。残念ながら、今回閲覧できた史料にタウンレーや国連経済社会部門が会議の開催前にソ連と直接連絡・交渉した際の史料は含まれていなかった。代わりに他の社会主義国、特に会議の開催国であるルーマニアとの交渉や準備に関わる史料に加えて、中華人民共和国との事前連絡・交渉に関する史料を閲覧することが出来たのは収穫であった。中華人民共和国はこの会議に初めて国連の正規のメンバーとして参加することになるのだが、タウンレー宛ての書簡の中で中国大使は社会主義国の立場から女性の社会参加や家族計画の意義、産児制限政策について説明しており、一人っ子政策が始まる前の中国で既に取り組まれていた産児制限政策の内容がみえてくる。またこれらの書簡は中国がこの会議へ参加するにあたり抱いていた懸念について知ることが出来る貴重な史料である。その他閲覧した様々な史料から国際連合が社会主義国と資本主義国、そして発展途上国に広く参加を促すために事前に多くの地域で小・中規模の人口会議を開催して専門家や政治家と意見調整している様子などもうかがえる。
国際連合史料館における史料収集の他には、コロンビア大学の図書館で主に1970年代ソ連の人口政策について二次史料や新聞の記事を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は国連史料館での史料収集の他にモスクワの史料館や一橋大学での史料収集を予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で国内外の出張を中止せざるを得なくなってしまったため、予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
国連史料館で今回は世界人口会議の準備期間に関する一部の史料を閲覧することが出来たが、残りの史料を閲覧するために再訪する必要がある。また今後ロシアの史料館での史料収集も欠かせない。しかし今年度の終わりまでに新型コロナウィルス感染拡大が終息して安心して渡航できるようになる可能性は低いため、今年度中に昨年度の遅れを取り戻すことは難しいと考えている。もちろん今年度にもともと予定していた海外での史料収集を進めることも恐らく不可能と思われる。 国内外の出張が出来ない中、当面の間はとにかく二次資料を収集することに集中せざるを得ないが、そもそも日本国内には存在しない二次資料も多い。また国内でも閉館していたり、職員の勤務時間を減らしている図書館が多く、大学間図書貸借システムを利用して資料の貸出のリクエストをしても断られるケースが続いている。 至極限られた二次資料に基づく研究では得られる成果もかなり限られたものになってしまう。当初予定していた研究内容を出来るだけ達成するために、今後のコロナの収束の状況を見て研究期間の延長願いをしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大で予定していた史料収集のための国内外の出張が出来なくなったため、次年度使用額が生じた。コロナ感染の問題が今年度の半ば頃までに終息すれば昨年度の遅れを取り戻し、今年度予定していた史料収集を進めたいと考えている。
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