研究課題
基盤研究(C)
本研究では、それまで反マルサス主義を掲げて家族計画の有効性を否定していたソ連が、1974年の世界人口会議で家族計画を受けいれるに至った理由について、主に人口学者の議論を分析して明らかにした。その結果、一定の条件下で家族計画が有効であるという議論は、既に1960年代初期に始まっていたこと、またこれはマルクスやレーニンの反マルサス主義の再解釈によって可能となったことが分かった。但し、これは反マルサス主義を放棄するものではなかった。
ユーラシアの歴史、ジェンダー
1991年のソ連崩壊の一因には、脱社会主義化があったと考えられているが、本研究は人口論に焦点を当てて、その過程を明らかにした。人口論をめぐる国際関係史という観点からは、冷戦の枠組みの意義と限界が確認された。ジェンダー史の観点からは、ソ連の学者が、子どもの数は自立した女性が自由に決めるべきであると主張していたことは、その後に起こった1980年代のフェミニズム運動の主張と重なるものであり、意義のある発見である。