研究課題/領域番号 |
19K00942
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
原 聖 青山学院大学, 文学部, 客員教授 (20180995)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 民画 / 東西比較 / 比較史 / 文化史 / 歴史人類学 / 民衆画 / エピナル版画 / 大津絵 |
研究実績の概要 |
今年度は計画上、最終年度だったので、民画の東西比較研究をさらに広げ、比較の総合的なまとめを行った。5月16日、日本西洋史学会大会(オンライン)にて、小シンポジウム「文化史(歴史人類学)としての比較史、民画東西比較研究を題材として」を行った。 個別研究会では、7月17日(オンライン)、原聖(研究代表者)が「ベトナム民画の概要について」、8月28日(文京アカデミー会議室)、富澤達三(松戸市立博物館)が「鯰絵の持つエネルギーについて」、11月28日(アカデミー千石)、畑山康幸(東アジア現代文化研究センター)が、「朝鮮半島における「民画」理解の新潮流」ついて、12月19日(アカデミー千石)、湯浅淑子(たばこと塩の博物館)が、「浮世絵としてのおもちゃ絵」について、2022年1月8日(アカデミー千石)、新江利彦(東京外国語大学)が「ベトナム・チャムの民画パニン」について、鈴木英恵(群馬パース大学)が「群馬県地域における初絵売り習俗」について報告を行った。また2021年11月13-14日、郭南燕(東京大学) を研究代表とする科研プロジェクト(基盤B)との、「明治期日本の宣教のためのド・ロ版画」に関する共同研究会を行った。 2022年2月19-20日(日仏会館、オンライン)、コロナ禍で延期となっていた民画の東西比較研究のシンポジウムを開催した。坂内徳明、上田あゆみ(共に一橋大学)が欧州について、久野俊彦、湯浅が日本について、三山陵、畑山、新江が東アジアについて報告を行い、原の司会によって、民画の東西比較について討論を行った。あわせて、民画の比較展示会を開催し(2月17-23日、日仏会館ギャラリー)、視覚的な東西比較の観点も取り入れた。昨年度実施できなかった中国での実地調査、また長崎での調査がコロナ禍で行えなかったので、本研究の研究成果をまとめる報告書の刊行も合わせ、来年度に延期した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、実地調査による個別研究は行えなかったが、比較研究のためのシンポジウムは日本西洋史学会と日仏会館とで2度開催でき、さらにド・ロ版画研究プロジェクト(郭南燕研究代表者)との共同研究会、また5回(6人報告)の研究会を積み重ねることで、最終年度に予定していた研究の多くを行うことができた。とりわけ、東アジアでの研究、ベトナムと朝鮮半島での民画の研究動向が報告されて、比較の範囲は大きく広がった。また日本についても鯰絵などの錦絵、またおもちゃ絵と総称される浮世絵版画の一種についても報告され、民画についての認識はさらに深まったといえる。しかしながら、コロナ禍により、中国や長崎、富山への実地調査が行えず、当初予定していた研究範囲を十全にカバーすることはできなかった。したがって、最終報告書の刊行も次年度に延期せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の状況が改善されるか否かにもよるが、できれば中国や長崎、富山への実地調査は行いたい。とはいえ最終年度の延長期間における予算は限られているので、報告書の刊行に全力を挙げることにしたい。前年度までの3年間に行った研究討論会で報告していただいた全ての報告者、すなわち2019年度5人(研究代表者を含む)、20年度4人、21年度5人に呼びかけ、論文としての提出を求める。もちろん、2021年度に行った2回のシンポジウムでの討論を踏まえ、新たな観点の導入も考えられるので、報告そのままを論文化する訳にはいかず、時間も限られているので、全ての報告者の論文提出は難しいかもしれないが、年度内の早い段階での刊行をめざすことにする。持ち越した研究資金については、できれば国内外の実地調査にも使いたいが、金額は限られているので、報告書の刊行に中心的に用いることにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、当初の予定としては最終年度であり、日本の民俗的絵画、浮世絵版画、錦絵について、またベトナムと朝鮮半島の民画について、合計5回の研究会を開催するとともに、日本西洋史学会での小シンポジウム(文化史(歴史人類学)としての比較史について、民画東西比較研究を題材に、2021年5月16日)、また日仏会館でのシンポジウム(民衆画の日仏比較、エピナル版画と大津絵・浮世絵・錦絵、2022年2月19ー20日)および展示会(民衆画の世界、2月17-23日)を行い、研究の成果を広く一般の研究者等に公開したが、予定していた中国、また長崎への調査旅行が行えず、報告書の執筆も含め、最終的なまとめは次年度に持ち越すことになった。
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