本研究では、これまで殆ど着目されていなかった司馬江漢「地球分図」に初めて焦点を当て、その作成過程を分析することを通じて史料性や史料的価値を解明し、江漢の海外情報受容過程を具体的に究明することを目的としている。本年度は研究期間の最終年度であったので、昨年度までに着手した研究作業を継続して研究内容の精緻化をはかるとともに、3年間の研究成果の総括と取りまとめを行った。具体的な研究実績は、以下の通りである。 研究代表者は、研究実施計画にのっとり、司馬江漢は、何故、どのような経緯で「地球分図」を作成したのかに加え、「地球分図」所収の29折の図版の分析を通じ、江漢が如何なる情報や書物・地図・器物を参照して製作したのかを、既存及び新規購入の各種史料と照合しながら特定し、製作過程を具体化する作業を継続した。また司馬江漢の海外情報受容過程を明らかにするために、江漢が「地球分図」を作製するに当たって参照した情報源・史料源の入手・閲覧ルートを、『司馬江漢全集』所収の著作・作品や伝記史料にあたりつつ、人的ネットワークや生涯の行動などに鑑みて考察する作業も引き続き行った。加えて昨年度より着手した、江漢と交流のあった大槻玄沢や伊勢商人稲垣定穀などの事例と比較検討していく作業も継続し、江漢の海外情報受容の在り方が、当時においてはどう位置づけられるのかを探究した。 一方、研究協力者の吉田忠は、前年度に引き続き、司馬江漢の主に天文図に関わるオランダ系情報受容過程の解明に資する資料集の分析をした。また同じく研究協力者の岩井憲幸は、江戸知識人の主にロシア地図に関わるロシア系情報受容過程の分析を継続した。 なお本年度は研究期間の最終年度に当たるため、研究代表者は、3年間の研究成果の取りまとめに向けて、司馬江漢「地球分図」解析に関連する、収集済みの諸機関所蔵の地図コレクション等の整理とデジタル化を行った。
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