研究課題/領域番号 |
19K00948
|
研究機関 | 公益財団法人東洋文庫 |
研究代表者 |
徐 小潔 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (20537865)
|
研究分担者 |
江南 和幸 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (70029106)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ペーパーヒストリー / 文理融合 / 非破壊調査 / ヨーロッパの印刷用紙 / 和刊本 |
研究実績の概要 |
2022年度は引き続き前近代ヨーロッパと日本の書籍を対象に、その紙を高精細デジタル顕微鏡で非破壊的な調査・分析をした。
ヨーロッパの紙に関しては、16~18世紀ヨーロッパ各地域の印刷用紙を調査、分析した結果、アムステルダム、ライプツィヒ、フランクフルトで出版された書籍に使われていた紙と、パリ、ロンドンで使われた紙は明らかに異なり、「紙」のヨーロッパ内の地域性を見いだすことができた。とりわけ、アムステルダム、ライプツィヒ、フランクフルトが印刷に使用していた紙の原材料にわらが含まれており、大航海時代以降に東アジアとの製紙技術の交流があったことを示唆する。この研究成果は、2023年4月に刊行される論文集Paper Stories: Paper and Book History in Early Modern Europe (Published by De Gruyter 2023)に収録される。
日本の紙に関しては、17~19世紀の江戸時代の絵入り刊本と浮世絵に用いられた紙を分析した。17世紀後半から、絵入り刊本用紙には楮、ミツマタの混合紙、あるいは楮、稲わらの混合紙を使用していたことが分かった。その紙から多かれ少なかれ米粉が観察され、微細な木版線刻の摺を保証する用紙であることが判明した。浮世絵用紙には、楮とミツマタの混合紙に米粉が大量に入っており、さらに上質の用紙が使われていたことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で、本来計画していた海外における資料調査や国際シンポジウムへの参加を諦め、日本国内での研究活動に集中した。
|
今後の研究の推進方策 |
「紙」の東西交流を考察するため、文字記録が多く残されている19世紀に刊行された書籍の紙の調査、分析を試みる。また、これまでの調査結果を整理するとともに、「紙」を通して前近代史や文学を研究する国内外の研究者との交流を通じて、コロナ以降の研究方法を検討していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、海外調査および海外における国際シンポジウムへの参加ができなかったため、次年度使用額が生じた。新型コロナウイルス感染症の状況により、次年度は海外における調査を検討する。
|