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2019 年度 実施状況報告書

戦時期日本の日雇労働者についての基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K00949
研究機関茨城大学

研究代表者

佐々木 啓  茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (50581807)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード日雇労働者 / 大日本労務報国会 / 扶桑会 / 労務供給請負業
研究実績の概要

初年度にあたる2019年度は、戦時から戦後にかけての労働史関係の文献を幅広く収集するとともに、国立国会図書館や早稲田中央大学図書館などで、戦時期から戦後初期にかけて設立された日雇労働者を統制する団体や、日雇労働者の生活実態に関連する史料の調査・分析を行った。
その結果、以下のような成果を挙げることができた。
第一に、全日本労務供給事業組合連合会や社団法人扶桑会、大日本労務報国会およびその各支部について、産業労働調査所編『労務時報』などに新たに関連記事を見つけることができ、それらの団体の活動実態について、新たな情報を含めて整理することができた。第二に、日雇労働者の生活環境については、『厚生問題』や『法律時報』に関連する記事を見つけることができ、その動態的把握を一定程度進めることができた。第三に、大日本労務報国会や扶桑会については、その役職者についても調査を進めた。労務供給請負業者の側から日雇労働者の動員の中心的役割を担った飛田勝造については、吉川英治の追悼記事や、小河内ダム建設時の映画フィルムの存在を確認することができた。飛田とも関係が深く、大日本労務報国会会長を務めた陸軍軍人松室孝良や、政治家松野鶴平についても、その活動実績について、検討を深めることができた。第四に、敗戦後の日雇労働者の動向については、飛田勝造の飛田組が占領軍の業務を請け負っていたという証言を見つけたほか、日雇労働者主体の「労働自治会」なる団体が結成されたとする史料を発見することができた。
これらの調査結果をふまえ、拙稿「「仁義」の動員――戦時期日本における日雇労働者」『歴史学研究』(976号、2018年)の内容を修正し、さらに深めていく作業を進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

史料調査については一定の進捗を見ているものの、アウトプットが順調に進んでいない。とくに2019年末から2020年3月にかけては、体調不良や入院、新型コロナウィルスの感染拡大などが重なり、十分な調査・研究を進めることができなかった。

今後の研究の推進方策

初年度は一定の研究の進捗があったものの、課題として残されていることも多い。まず第一に、当該期の労務供給請負業の中心人物の一人である飛田勝造の活動実態について、より一層深められるよう進めていきたいと考えている。具体的には、小河内ダム建設時に作成されたという映画フィルム(神戸映画資料館に所蔵されているとされている)を調査するほか、飛田が大洗町などに残した記念碑、石碑のフィールドワークを行って、内容を精査していきたいと考えている。
第二に、コロナウィルス感染拡大の収束状況を見て、ということになるだろうが、アメリカ国立公文書館(NARA)に収められている労働問題や日雇労働者に関わる資料の調査をはじめ、海外での史料調査や研究交流に力を入れたいと考えている。また、女性と朝鮮人の日雇労働者の動向について、社会調査資料などを用いて分析を進める予定である。
第三に、今年度十分に進められなかったアウトプットの作業、具体的には学会・研究会での報告や、論文化をすすめていきたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

今年度は、体調不良や新型コロナウィルス感染拡大の影響で、史料調査が十分にできなかったほか、アルバイトを使用した史料整理などを進めることができなかったことから、必要となる旅費・人件費等が未使用となった。体調はかなりの程度改善されたので、次年度は、新型コロナウィルスの収束状況を見て、これらの活動を進めるために使用する。

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公開日: 2021-01-27  

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