研究課題/領域番号 |
19K00950
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
片桐 昭彦 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (00796716)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 年代記 / 災害記録 / 歴史地震 / 自然災害 |
研究実績の概要 |
本研究は、15~17世紀の日本列島各地の地震や自然災害の発生した年月日・地域を確定するため年代記から信頼できる記録を抽出することにある。そのために本研究では、(1)日本各地に残る年代記の調査・収集および史料学的検討、(2)多種多様な年代記のデータベースの構築を行う。 (1)については、国立公文書館、東京大学史料編纂所、国文学研究資料館、東京都立中央図書館、富山県公文書館、高岡市立中央図書館などで年代記の調査・収集を行った。そのうち、①三河国渥美郡堀切村(現愛知県田原市)の『常光寺王代記并年代記』影写本を史料学的に検討し、本年代記が1541年までに常光寺3世樹王がまとめた後、少なくとも14人が代々書き継いだこと、1466年以降の各記事は同時代史料であることを明らかにし、本年代記の自然災害記事をすべて翻刻紹介した。②高岡市立中央図書館所蔵の武内七郎編『越中水害年譜資料』には近世に編纂・作成された年代記の記事が数多く引用されていることを確認できたが、ほとんどが『倭漢皇統編年合運図』を典拠に加筆文飾した可能性が高く、15世紀半ばの越中(現富山県)の地震津波発生を示す歴史史料としては信頼できないことを明らかにした。 (2)については、収集した年代記の記事を年月日順にExcelを用い入力作業を行い、『重撰皇統編年合運図』『倭漢皇統編年合運図』『鎌倉大日記』『勝山記』『常光寺王代記并年代記』の記事の入力作業を行った。 なお、11月16日、新潟大学において前近代歴史地震史料研究会を、新潟大学災害・復興科学研究所「日本海沿岸地域を中心とした地震・火山現象の解明のための史料収集と解析」研究グループなどと共催し、歴史学・考古学・地理学者・地震学の各分野研究者15人による歴史地震に関わる研究発表をして情報交換・収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年代記の調査・収集、史料学的な検討については、年代記を所蔵する国立公文書館、国文学研究資料館、東京都立中央図書館、富山県公文書館、高岡市立中央図書館などで年代記の調査・収集を行うことができた。とくに『常光寺王代記并年代記』影写本を史料学的に検討することにより、具体的に15~17世紀の三河・遠江(現愛知県田原市・静岡県浜松市)における信頼できる歴史地震・自然災害の記録を抽出することができ、その成果を論文などに発表することができた。また、高岡市立中央図書館所蔵の武内七郎編『越中水害年譜資料』には近世に編纂・作成された年代記の記事が数多く引用されていることがわかり、未調査の年代記の存在を確認することができた。 年代記のデータベースの構築については、収集した年代記のうち『重撰皇統編年合運図』『倭漢皇統編年合運図』『鎌倉大日記』『勝山記』『常光寺王代記并年代記』の記事を入力することができた。 しかし、年度末の3月に東京大学史料編纂所で年代記の調査・収集を行う予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大にともなう閉室および出張自粛のため叶わなかった。
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今後の研究の推進方策 |
史料を調査することができるのであれば、昨年度と同様の方法で継続すれば研究の推進に問題はない。しかしながら、今般の新型コロナウィルスの影響により東京都内をはじめ多くの史料所蔵機関への調査が困難になっている。 そのため今年度は、まずweb上に写真や翻刻が公開されている年代記、および既に翻刻され刊行されている年代記を収集・調査することを優先的に行っていく。そして、データベース構築のため、昨年度および今年度に収集・調査した年代記の記事情報の入力作業をできるかぎり進めておく。 また、全国各地の史料所蔵機関の開館情報は常に確認し、利用可能になったら即時に調査できる態勢・準備をととのえておく必要がある
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