研究課題/領域番号 |
19K00950
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
片桐 昭彦 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (00796716)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 年代記の出典 / 災害記録 / 歴史地震 / 自然災害 / 享徳3年陸奥地震 |
研究実績の概要 |
本研究は15~17世紀の日本列島各地の地震や自然災害の発生した年月日・地域を確定するため年代記から信頼できる記録を抽出する。そのため(1)各地に残る年代記の調査・収集、および史料学的な検討、(2)年代記のデータベースの構築作業を行う。 (1)については、昨年度に引き続き新型コロナウィルス影響による出張自粛のため、新潟県外の史料所蔵機関等への調査を実施できなかった。そのため本年度も、一昨年度に収集・調査した年代記とともに、既刊行あるいはweb公開されている年代記の史料学的な検討を行った。その結果、①『王代記』・『加納家年代記』・『赤城神社年代記』の享徳3年11月23日(1454年12月12日)の地震・津波の記事の出典はそれぞれ系統が異なることから、この地震は陸奥国沿岸(あるいはその一部)に津波をひきおこす地震であるとともに、上野国や甲斐国でも年代記に特筆する大地震が発生したと考えられることを示したこと、②『新撰越後国年代記』・『塔寺八幡宮長帳』裏書に従来注目されなかった明応2年(1493)6月の会津や越後の被害地震記事を確認したことである。 (2)については、収集した年代記の記事を年月日順にExcel表に入力する作業を行い、『王代記』・『加納家年代記』・『赤城神社年代記』・『新撰越後国年代記』・『塔寺八幡宮長帳』裏書の記事入力を終えた。 なお、11月14日にオンラインにて第9回歴史地震史料研究会を共催し、歴史学10人・考古学1人・地理学2人による歴史地震に関わる研究発表・討議をして情報交換・収集を行った(参加者41人)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年代記の調査・収集、史料学的な検討については、新型コロナウィルス感染拡大の影響により新潟県外の史料所蔵機関等への調査をほとんど実施できなかったが、前年度までに収集した年代記を中心に、既に翻刻刊行されている年代記や、史料所蔵機関等のweb上で公開されている年代記を収集して史料学的な検討を行うことができた。 具体的には、①年代記『王代記』・『加納家年代記』・『赤城神社年代記』を史料学的に検討し、享徳3年11月23日(1454年12月12日)の地震の規模を考える上で重要な情報を提供でき、その成果を研究会、論文などに発表できた。②『新撰越後国年代記』・『塔寺八幡宮長帳』裏書を史料学的に検討し、従来注目されなかった明応2年(1493)6月の会津や越後の地震を確認し、その成果を研究会、論文などに発表できた。 また、年代記のデータベース構築のための作業については、収集した年代記のうち『王代記』・『加納家年代記』・『赤城神社年代記』・『新撰越後国年代記』・『塔寺八幡宮長帳』裏書の記事を入力することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度に引き続き、新型コロナウィルス感染拡大の影響のため、現所在新潟県の外の史料所蔵機関等への調査を実施できなかった。そのため、東京都の国立公文書館・東京大学史料編纂所・国文学研究資料館、京都府の歴彩館、石川県の金沢市立玉川図書館などの史料所蔵機関等における年代記の調査・収集を優先的に実施する。 そして、収集した年代記を史料学的に検討するとともに、収集・調査した年代記の記事情報の入力作業を進めてデータベースの構築をめざす。 また、本年度も歴史地震史料研究会を共催し、年代記に関する成果を発表するとともに関連情報の交換・収集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、新型コロナウィルス感染拡大の影響のため、現所在新潟県外の史料所蔵機関等への調査を実施できなかったため、次年度に実施する必要が生じた。そのため次年度まで期間を延長し、本年度までに検討してきた年代記の出典となる可能性のある年代記を収集・調査するため、次年度は、東京都の国立公文書館・東京大学史料編纂所・国文学研究資料館、京都府の歴彩館、石川県の金沢市立玉川図書館などの史料所蔵機関等への調査を実施する予定である。
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