本研究では15~17世紀の日本列島各地の地震や自然災害の発生した年月日・地域を確定するために年代記から信頼できる記録を抽出するため、①各地に残る年代記の調査・収集および史料学的な検討、②年代記のデータベースの構築作業を行った。 令和4年度の成果は、①については『年代記配合抄』写本2点と『赤城神社年代記』真隅田本の調査・検討を行い、『年代記配合抄』の1410~1582年の7件、『赤城神社年代記』の1409~1584年の4件の地震関連記事が信憑性の高いことを確認できた。②については上記の年代記3点と『和漢合運図』『皇年代記』『新撰和漢合図』の記事を入力できた。 研究期間を通し、新型コロナウィルス影響による出張自粛制限などのため、年代記の調査・収集は関東や近県の史料所蔵機関などで実施し、既刊行またはweb公開の史料の活用も多くなったが、収集した年代記のうち12点の年代記について史料学的に検討・分析を行いそれぞれ信頼できる記事を抽出できた。また、年代記のデータベースの構築は収集した年代記24点の記事の入力を終えることができた。 歴史地震研究に寄与した主な成果としては、①『常光寺王代記并年代記』の成果により1498年明応東海地震(南海トラフ巨大地震)に先行する約5年前の明応2年10月29日(1493年12月7日)に京都~遠江国の広範囲に揺れを及ぼす大地震が発生したことを明らかにしたこと、②関東で成立した年代記5点などの成果をふまえ、享徳3年11月23日(1454年12月12日)の地震は陸奥にかぎらず関東でも大震動のあったこと、同年12月10日ないし12日にも武蔵・相模で大地震のあったことを明らかにした点である。 なお、期間中毎年1回11月に歴史地震史料研究会を共催し、歴史学・考古学・地理学・地震学の各分野研究者による研究発表・討議を行うことができた。
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