グローバルヒストリーは、今日から将来を展望する上で必要な歴史認識の方法である。それは近現代にだけではなく、前近代にも当てはまる。その場合、国境や民族を越えた人類史の連動の事実を知ること自体の重要性だけではなく、生活者民衆が苦闘の中から普遍的思想を紡いだ事実に絶大な意味がある。外来仏教思想であった「不殺生」(非暴力)、「慈悲」(愛情)、「和合」(平和)などの思想は、断片的に残る民衆の発言史料に確かめられる。それは西洋近代思想が導入される以前の史実である。また今日、仏教用語だと意識されないほど日本語として定着している。しかもなお、その理想は十分に実現していないという課題を私たちに突きつけている。
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