研究課題/領域番号 |
19K00962
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
西川 広平 中央大学, 文学部, 准教授 (60574150)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自然災害 / 東海地震 / 日本中世史 / 日本近世史 / 内陸地域 / 災害復興 / 歴史学 / 古文書 |
研究実績の概要 |
2020年度は新型コロナウィルス感染症蔓延の影響により、当初予定していた史料調査を実施することはできなかった。その代わりに、2019年度に得た調査データ等を活用して、15・16世紀に発生した大地震の災害に関する情報が、内陸地域である甲斐国においてどのように伝来したのかを研究した論文「十五・十六世紀の列島内陸部における地震災害について―甲斐国を対象に―」を執筆し、『紀要』史学第66号(中央大学文学部、2021年3月)において発表した。 この中で、大規模地震による被害状況について、沿岸地域の津波による災害が注目されている一方、内陸地域では、余震を含めた震動による建物倒壊と、その後に発生した暴風雨によって生じた土砂崩落・土石流災害の影響が甚大であったことを特徴とし、被災地域の領主や住人による居住地移転、および新たな開発の展開に影響を及ぼしたこと、並びに地震災害に関する史料の作成にあたっては、同一の宗派もしくは地域社会で形成されていた寺院間のネットワークを踏まえて、災害に関する情報が収集されたこと等を指摘した。 また、2021年3月には、山梨県立博物館において、同館に収蔵されている「甲州文庫」・「頼生文庫」等の文書群の中から、1854年の安政東海地震に関する史料を調査し、「甲府大地震之記」、「地震潰家取調帳」他10件の史料を写真撮影する機会を得た。 今後は、同館における史料撮影や翻刻作業を進めるとともに、社会情勢を踏まえつつ、予定している史料調査を実施していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症蔓延の影響により、当初予定していた山梨・静岡県内における史料調査を実施することができず、また徳島県内における中世の津波災害に関わる石造物の調査も、感染症拡大防止の観点から移動を制限せざるをえず、2020年度は取り止めとなった。 研究協力者とは、逐次連絡を取り合っているものの、各所属先から出張の許可が出ず、またオンライン環境の不整備により、調査や研究会に参加してもらうことができなかった。 各方面において、調査の実施が困難な状況の中、2021年度に予定していた山梨県立博物館の収蔵史料の調査をできる目途が立ったので、計画を前倒して実施した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に引き続き、現状では2021年度に計画している調査を実施できる見通しが、山梨県立博物館等を除いて十分に立っていない。このため、2020年度と同様に、これまでの調査で画像を入手した古文書の分析等、実施可能な内容について優先的に研究を進める予定である。また、今後に予定している調査であっても、受入先の了解が得られる場合には、計画を前倒して実施する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、新型コロナウィルス感染症蔓延の影響により、当初予定していた史料調査を実施できなかったため、次年度使用額が発生した。2021年度は、社会情勢を踏まえつつ、2020年度に実施できなかった調査を含めて実施を検討するとともに、2022年度に予定していた調査でも調整が付く案件は前倒して実施することにより、研究計画の遅れを取り戻したい。
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