研究課題/領域番号 |
19K00965
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
福島 金治 愛知学院大学, 文学部, 教授 (70319177)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 兵法書 / 密教僧 / 修験者 / 聖教 / 島津家文書 / 防衛大学・有馬文庫 / 米沢市図書館 |
研究実績の概要 |
中世の兵法書が、「国家」(大名の領域とその家中)理念とどのような関係にあるか、について下記の資料収集と調査・研究を行った。 1)調査について。原資料の調査を兵法書の現物確認と写真撮影、また、マイクロフィルムからの複写などで収集した。まず、兵法書本体については、防衛大学綜合情報図書館所蔵「有馬文庫」中の「兵法四十二眼目五ヶ大事」「大元次第」を撮影し、現在、翻刻作業を行っている。次に、兵法書と信仰の関係を考えるために、佐賀県立図書館所蔵の龍造寺家文書・後藤家文書の起請文の神文と牛玉宝印について原本調査、および、東京大学史料編纂所の影写本・写真版での調査を行った。「軍神摩利支尊天」などの起請文への入り方、および起請文に見る信仰圏をさぐるためである。特に大村純忠の起請文はキリシタンの神仏という伝統的な信仰との関係を知る上で、とても参考となった。そして、中世以来の大名家の資料に兵法書がどのように伝来しているか知るために、米沢市図書館・岩手県立図書館・秋田県立図書館の上杉・佐竹氏等の兵法書について調査した。関連資料を複写・写真撮影して収集した。甲州流が多く、中世前期にさかのぼるものはあまりなかったが、医学書に兵法書と類似した構成のものがみつかった点は大きかった。 2)調査研究の公開について。今まで知られなかった兵法書を初回する作業として、「戦国期島津氏の兵法書『刑罰治国慮理撫民武用記』-翻刻と紹介-」(『愛知学院大学人間文化研究所紀要 人間文化』34、2019年9月)で資料紹介を行った。島津氏の兵法書で密教的理解で家督の養成方法を論じた書物である。また、龍造寺家文書等の起請文調査の成果は「戦国期肥前の起請文の神文よりみた在地社会」として発表した。その刊行は本年5月の予定である。この他、兵法と暦法に関する論文も投稿済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料収集は、ある程度できたが、一部の資料は原資料の現在の所蔵者の確認ができないため、写真撮影などできていない。こうしたものは、長期の調査を現場で行う必要があり、方法などを検討している。 CDLOMで購入する予定だった資料は、販売が停止され、古本等でも購入できない状態となっている。これについては、変更し、原資料の調査に注力していきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1)調査について。原資料の調査を兵法書の現物確認と写真撮影、また、マイクロフィルムからの複写などで収集する。防衛大学綜合情報図書館所蔵「有馬文庫」中の兵法書は、引き続き行う予定だが、後補の2点は文化財修復中であった。現状を確認した上で、その作業に入りたいと思う。また、毛利家など西国の大名家に伝来した兵法書の調査が行えていない。目録類で確認の上で、資料の所在を確認する調査を進めたいと思う。そして、起請文の「軍神」が神文に入るものの牛玉宝印を含めた原本調査は、佐賀県多久市図書館の後藤家文書を検討している。 2)本年度、収集した資料類について、主要なものは翻刻作業をすすめる。防衛大学綜合情報図書館所蔵「有馬文庫」中の「兵法四十二眼目五ヶ大事」は4割ほど、翻刻作業をすすめており、まずは、これを完成させたいと思う。そして、今まで収集してきたなかには、兵法書が近世に医療などの俗的な治病の作法書に転じているものを、多数、みつけることができた。こうした書物の翻刻作業を行っていきたい。 3)調査研究の公開について。調査によって確認できた兵法書については、順次、今まで知られなかった兵法書を初回する作業として、活字媒体で紹介する方針である。すでに、兵法と暦法に関する論文は投稿済みであり、本年度中に刊行されるように努力したい。また、関連して兵法と分国法との関連性について、内容を検討していきたいと考えている。 4)最後に、現在、コロナの蔓延で図書館の閉館などが相次いでおり、先がみえない。こうしたなか、原本調査に困難が生じる可能性が高いので、マイクロフィルムで撮影済みの本で入手可能な物から、順次、収集していくようにしたい。優先順位は、やりたいことよりやれることにおいて研究を推進したいと思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
文献調査を3月に予定していたが、コロナなどの影響があって、調査が十分に行えないと判断し、2020年度に使用した方がよいと判断した。
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