研究課題/領域番号 |
19K00965
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
福島 金治 愛知学院大学, 文学部, 教授 (70319177)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 兵法書 / 地方暦 / 八代日記 / 人吉願成寺 / 起請文 / 竜造寺家文書 / 牛王宝印 / 島津家文書 |
研究実績の概要 |
1.論文発表は以下の2点を発表した。それは、①「戦国期肥前の起請文の神文よりみた在地社会」(市村高男編『中世石造物の成立と展開』、高志書院、2020年4月)、②「中世後期における地方暦と在地社会」(『新陰陽道叢書』第二巻、名著出版、2021年1月)である。①では起請文の神文と牛王宝印の関係に触れた。特に起請文に使用された牛王宝印の使用圏を起請文の神文と比較することで、起請文の分析を以前より細密に分析できたと思っている。そして、肥前黒髪社の信仰圏と「軍神摩利支尊天」の入る起請文について、その背景に兵法者の存在を指摘した。「軍神」の入る起請文は、全国的な調査も必要だが、こうした独特な起請文の出現の背景には、それに見合うマニュアルとしての兵法書などと介在する宗教者などの存在が考えられる。これを検討したい。また、②では中世後期の南九州の地方暦を人吉願成寺の密教僧の印信と相良氏家臣の『八代日記』を利用して検討し、島津家文書の兵法書に残る暦のマニュアルを利用して、地域社会と暦を兵法書を媒介に改名した。印信の利用は、これまで筆者以外は取り組んでおらず、方法などで新しい技術を紹介できたのではないかと思う。 2.島津家文書の兵法書の写真版で収集を行った。コロナで資料の現地調査が不可能となったため、かねて調査しておいた島津家文書の兵法書を写真版で購入し、これを製本した。作業が格段に進む準備は整えることができた。 3.情報交換について、 海外の日本兵法研究者とメール交換を行い、今後、来日された際の共同調査のきっかけをつくった。満足できる状態ではないが、基本的な作業を行い、研究の基盤を整えることはできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作業は、コロナで出張できず現地資料の調査ができなかった。そのため、2020年度は旧来からの調査分の写真収集、原稿執筆に力点をおいた。 論文公開2点は、ほぼ順調に行った成果といえる。また、島津家文書の写真版は収集し、これを製本した。段ボール2箱分の分量で、現状は、まだその全体分をつかんでいるわけではない。この点の検討が不足しており、内容の整理が求められているといえる。 龍造寺家文書など、地方に散在する兵法書の発見もつづけてきた。防衛大学校の有馬文庫の資料の翻刻作業はいまだ中途でおわっいてる状態である。 全体的見通しはたっているので、作業を着実にすすめたいと思う。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、島津家の兵法書の検討をよりすすめ、前年まで収集した資料の整備につとめ、論文作成を行いたいと考えている。 1.有馬文庫の兵法書の翻刻作業をすすめる。長文の曹洞宗の禅僧の兵法書の翻刻に取り組んでいる。翻刻は3割ほどは完了している。 2.島津家文書の兵法書を、内容分類し、その性格をグループ分けする。特に、金世初期の島津光久本を編纂した黒田氏編集の兵法書の源流を、他の島津家の田書類との関連を調査・確認することが重要と考えている。すでに、戦国段階の大唐流などの兵法書は仕分け済みで、論文発表も完了しており、これを基礎に近世初期分の仕分けをしようと思っている。 3.以上の内容を、完成次第に論文とする。 4.コロナで出張がむつかしいが、沈静化がみこまれる12月前後からの調査を、現段階で検討し、可能となればすぐに実行したいと思っている。越後方面の修験関係資料に注目している。米沢・秋田・岩手では馬医関係の資料に兵法書と類似するものを確認しており、その継続的視点から越後・越中方面の修験資料に兵法関係署が混入しているのではないかと、見通しをたてている。
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