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2022 年度 実施状況報告書

近世産業絵巻の基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K00969
研究機関新潟県立歴史博物館

研究代表者

渡部 浩二  新潟県立歴史博物館, その他部局等, 研究員 (20373475)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード近世産業 / 産業絵巻 / 佐渡金銀山 / 鉱山絵巻 / 農耕絵巻 / 製茶絵巻 / 捕鯨絵巻 / 製紙絵巻
研究実績の概要

農耕、製茶、捕鯨、製紙、織物、鉱山など近世産業絵巻関係史料の調査を引き続き実施した。それらの制作背景や目的は、狩野派など職業絵師の画題として、生業を継承するための記録として、幕府や藩の殖産興業との関わり、など多様であった。制作年代は、狩野派など職業絵師が17世紀には画題としていた農耕や製茶の絵巻を除けば、18世紀以降が大半を占める。
これらの絵巻の制作は、当然ながら産業の発展が契機とはなったが、幕府や藩の殖産興業との関わりという視点で見れば、必ずしもその盛期を描いたものではなかった。幕府領鉱山である佐渡金銀山の絵巻を例に見ると、金銀産出量が激減していた1730年代頃に制作が開始されており、その現状を記録・報告する目的が推察される。肥前国唐津藩における20余の産業の様子を唐津藩水野家の家臣・木崎盛標が安永2年(1773)~天明6年(1786)にかけて描いた「肥前州産物図考」も藩財政の危機と殖産興業への関心が背景にあったと考えられている。また、越後小千谷縮は、江戸中期頃に最盛期を迎えたとされるが、その製造工程を描いた「縮布製造之真図」は明治18年(1885)の制作であり、近代化の波にさらされるなかで、伝統的な織物産業の様子を記録として残そうとする制作意図も推察された。
また、鉱山絵巻では、最盛期を過ぎた江戸後期に絵巻の制作や写本化が顕著となる傾向がうかがわれた。この背景には、地域産業や博物学などに対する関心の高まりとともに、絵巻の制作を担う層や、それを受容する層の拡大といった文化の大衆化、地方文化の発展とも密接に関わると推察された。
以上の成果の一部は、新潟県立歴史博物館の令和4年度秋季企画展「生業絵巻尽」において還元した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

令和4年度は、これまで新型コロナウィルス流行の影響で制限されていた調査・撮影を大きく進めることができた。しかし、完了には至らず、研究期間を再延長することとなったため。

今後の研究の推進方策

これまで集積した近世産業絵巻関係史料のデータを整理し、まとめの作業を行う。具体的には、個々の絵巻の作者、制作時期、制作目的、所蔵者(旧蔵者)などの整理を進め、近世の産業絵巻群全体のなかに位置づけ、近世産業絵巻群の構造を総合的に検討する。データの整理にあたっては、絵巻化されなかった(されにくかった)産業についてや、絵巻と屏風・和本・扇面といった形態の史料との関連などについても検討し、近世産業の史料化や絵画的展開についても見通しを立てたい。

次年度使用額が生じた理由

令和4年度は、これまで新型コロナウィルス流行の影響で制限されていた調査・撮影を大きく進めることができた。しかし、完了には至らず、使用残金が生じた。最終年度は、これまでの補足調査を実施し、調査報告書刊行などの経費として活用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 図書 (1件)

  • [図書] 生業絵巻尽-ひらけ!江戸の産業図鑑-2022

    • 著者名/発表者名
      新潟県立歴史博物館
    • 総ページ数
      144
    • 出版者
      新潟県立歴史博物館

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公開日: 2023-12-25  

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