研究課題
基盤研究(C)
江戸時代を中心に制作された、各種産業の一連の生産工程などを画題にした絵巻(近世産業絵巻)を集積し、年代や制作背景などを分析した。それらは江戸時代の産業の発達を反映し、新たな画題として制作・受容された側面をもつ。一方で、必ずしも産業の盛期を描いたものではなく、それらの制作の背景には、地域産業や博物学などに対する関心の高まりとともに、絵巻の制作を担う層やそれを受容する層の拡大といった文化の大衆化、地方文化の発展とも密接に関わることを検討した。
日本近世史
日本の絵巻研究は、平安時代から室町時代までに制作されたやまと絵作品を中心に行われてきた。よって、江戸時代以降にも継続して展開された多様な絵巻文化のあり方については体系的に整理・研究されていない。本研究では、江戸時代の安定した社会の中で発展した各種産業の一連の生産工程などを画題にした絵巻(近世産業絵巻)の集積と分析を通じて、近世社会における絵巻文化の一端を日本絵巻史上に位置づけることを試みた点に意義がある。