2021年度もコロナの影響により海外での史料調査ができなかった。また国内についても沖縄での資料調査ができず、インターネットを通じて史料収集を行ったが、「二階から目薬」もどかしさを感じるばかりで、はかばかしい進捗を見なかった。しかし読谷村史編集室の協力を得て、沖縄戦後教育史復帰関連資料を収集した。また、2022年度から始まる22H00082「冷戦体制下の日本における教育労働運動の構造と機能に関する研究」(代表廣田照幸)で研究分担者を務めることになり、その準備作業としての研究会に参加する中で、日教組史料中に沖縄復帰運動に関するものをいくつか見つけることができた。そして2022年3月初旬に別件で沖縄に行く機会を得たことにより、読谷村史編集室を訪問して大々的に史料収集を行った。3月21日の象徴天皇制研究会で「沖縄祖国復帰運動における日の丸と君が代―沖縄戦後教育史復帰関連資料を手がかりに―」と題して、その成果を報告した。まだ十分な分析ができていないが、論文としてまとめる予定である。 「沖縄にとって天皇制とは何か」という問いを足がかりに、沖縄における天皇制の位置づけを、地元メディア及び復帰運動関連の史料分析により実証的に明らかにし、天皇が国民統合の象徴であるということの意味を沖縄の視点から考究することが本研究の目的である。これまで、「沖縄のメディアが、沖縄に関心を寄せる皇室像を描くことで、皇室を本土と沖縄を結ぶ紐帯の象徴として描き出すことになった」「皇室の冠婚葬祭に参加することが日本国民としての自覚を養い、復帰運動の発展につながると認識されていた」ことなどを明らかにしてきたが、沖縄戦後教育史復帰関連資料の中に、著者の知見を裏付ける資料を発見できた。さらに日教組の影響も研究の視野に入ってきたので、今後は上記共同研究の中で、本研究を発展させていくことになる。
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