日本近世において仏教が果たした役割としては葬祭や祈祷、寺請けといった事柄が従来注目されがちであった。しかし実際には近世は民衆教化が盛んとなり重要となった時代であった。そのため本研究では教学の展開や教化のありように注目して、仏教が近世社会において果たした役割を再評価した。また、諸宗派や諸教が併存した日本近世の在りように注目したことで、世界の中の他地域と比較した場合の日本宗教の特質を理解する前提をかたちづくることができた。この点は、異なる宗教を奉じたり価値観を抱いたりする人々がどのような場合に共存できるのかという、現代的問題を考える上でも参考となるはずである。
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