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2021 年度 実施状況報告書

日本古代の「移民」と国家・文化の形成―前近代東アジアの人の移動と定住のなかで―

研究課題

研究課題/領域番号 19K00979
研究機関愛知県立大学

研究代表者

丸山 裕美子  愛知県立大学, 日本文化学部, 教授 (00315863)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード日本古代史 / 移民 / 正倉院文書 / 古文書学 / 本草 / 唐代史
研究実績の概要

本研究は、日本古代国家・文化の形成に「渡来人」「帰化人」が果たした役割を、「移民」あるいは「東アジアの人の移動・移住・定住」という視点で捉えなおすことによって、現代社会に通じる移民の問題について、新たな理解・認識を得ようとするものである。前近代東アジア世界において、日本列島の古代社会が「移民」をどう受け入れたのか、また「移民」がどのように日本に同化したのかを明らかにすることを目指している。
令和2年度の実績として、8世紀の写経所文書に見える「移民」について、5世紀以来の移民の子孫と、7世紀後半の百済・高句麗遺民(移民)の子孫とを把握し、その同化の様相を分析して「古代の移民と奈良時代の文化」として、『日本古代の律令制と中国文明』(山川出版社)に発表した。この成果を踏まえ、本年度は、中国に移住した百済・高句麗遺民(移民)について、墓誌のデータを整理したが、近年すぐれた専論が出たこともあって、自らの研究論文としてまとめるには至っていない。
一方、関連して、日本古代の文書様式について、東アジア古文書学という視点で告身・位記の受容を考察した成果をあげた(「円珍の位記・智証大師諡号勅書と唐の告身」)。文字や文書行政の知識を中国から継受した日本の古代国家が、いかにしてその技術・書式を自家薬籠中のものとすることができたのかを明らかにした。
また中国の薬学書である『新修本草』を移民(難波薬師氏)の子孫である深根輔仁が編集した『本草和名』について、中国の研究者と共同研究を行って、学会発表し、翻刻、出版した(『本草和名-影印・翻刻と研究-』汲古書院)。これらは、日本古代国家の文化の形成に関わる研究成果である。
さらに、研究の主な分析対象である日本古代の史料について、近世初期の徳川家康による古典籍の蒐集事業が大きな影響を与えていることを、当該期の公家の日記を詳細に検討して、具体的に明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

理由
本年度は、移民の子孫である深根輔仁による『本草和名』を影印・出版するなど一定の成果をあげることができたが、一方で、コロナ禍のために国内外の調査を行うことができなかった。とくに中国出土の百済・高句麗遺民(移民)の墓誌などを現地(中国・台湾等)で実見することを考えていたが、実現できなかったため、この分野の研究がやや遅れてしまった。

今後の研究の推進方策

これまでに蒐集した中国出土の百済・高句麗遺民(移民)の墓誌を詳細に分析し、論文にまとめたいと思っている。近年すぐれた先行研究もでているので、それらの成果を批判的に継承しつつ、独自の視点で、分析と考察を進めたいと考えている。
5月には、第66回国際東方学者会議(ICES)において、シンポジウム「東アジア比較古文書学の可能性」を企画運営し、国内外の研究者を招聘して(Zoomによるオンライン開催)、中国の文書様式が日本古代の文書様式に与えた影響について、新たな知見を示し、議論を深めることになっている。
また日本古代の医療制度や医学知識に関して、「移民」が果たした役割をふくめた概説書を執筆する予定である。

次年度使用額が生じた理由

研究にやや遅延が生じている理由について述べたように、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、国内外、とくに海外(中国)における調査を行うことが不可能な状況であったため、国外旅費の執行ができなかったことが大きな要因である。新年度においては、秋以降になるとは思うが、状況が改善されれば、中国・台湾に出張し、史料の実見・調査を行いたいと考えている。また5月に行う国際会議において、研究協力者である留学生に翻訳・通訳を依頼しており、その謝金の執行にもあてる予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 徳川家康による古典籍の蒐集-「富士見亭文庫」成立以前-2022

    • 著者名/発表者名
      丸山 裕美子
    • 雑誌名

      愛知県立大学日本文化学部論集

      巻: 13 ページ: 135-156

    • DOI

      10.15088/00004846

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 『本草和名』諸本の研究・補論2021

    • 著者名/発表者名
      武 倩、丸山 裕美子
    • 学会等名
      第124回訓点語学会春季研究発表会
  • [学会発表] 徳川家康の典籍蒐集-古代史料を中心に―2021

    • 著者名/発表者名
      丸山 裕美子
    • 学会等名
      令和3年度蓬左文庫典籍研究会シンポジウム「江戸幕府の書物と蓬左文庫」
  • [図書] 本草和名ー影印・翻刻と研究-2021

    • 著者名/発表者名
      丸山 裕美子、武 倩
    • 総ページ数
      614
    • 出版者
      汲古書院
    • ISBN
      978-4-7629-4239-6

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公開日: 2022-12-28  

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