最終年度は、「通憲入道蔵書目録」の写本調査、古記録中の漢籍情報のデータ整理、研究成果の研究発表と論文執筆を行った。写本調査は、金沢市立玉川図書館及び東京大学総合図書館において実施した。研究発表は、中国鄭州大学及び国際日本文化研究センタ主催の講演会・研究会で行った(どちらもリモートシステムによる)。論文は5本執筆した。また、前年度に執筆したものが3本公刊された。 研究期間全体を通じては、写本調査では東洋文庫で平安期の日中交流に関する新知見を示す史料の発見ができた。また、「通憲入道蔵書目録」の写本調査により、通行の史料集の表記の誤りを正すことができた。古記録中の漢籍情報の収集・整理は、予定よりは遅れているが、かなりの部分達成でき、引き続き作業を続けてゆきたいと考えている。研究期間中には、著書11冊(単著1冊、共編著1冊、共著9冊)を刊行し、雑誌論文3本、研究発表3件を発表した。この他、執筆したが、未公刊の論文が7本存在する。その他、日中共同研究として、中日文化交流史叢書の「書籍巻」の編者となり、論文の取りまとめを行った。 上記の研究活動を通じて、平安時代中後期の「国風文化」期においても、中国文化の影響が濃厚であったことを明らかにできた。なお、それ以前の律令制期に比べると、輸入された書籍には偏りが見られ、選択的に中国文化の摂取が行われたことが確認できた。また、支配者階級上層部に止まらない、中国文化の広まりも確認できた。書籍の輸入状況から、中国文化の流入状況、影響の実態を解明できたものと考える。
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