従来、中国文化の影響が薄れたとされる「国風文化」期においても、中国書籍(漢籍)が多くもたらされていたことを明らかにできたことは、当該期の文化理解の常識を覆すことにつながるものと考える。すなわち、「国風文化」期においても中国文化の影響は大きかったことを解明できたと考える。実際、年号勘申や今昔物語集にも中国書籍の影響が確認されるし、死体の一部を薬とする人肉薬や死体を祭るミイラ信仰が中国から導入されていたことは、そのことを大きく裏付けるものである。当該期の文化を、雅で和風の貴族文化という一面的な捉え方から、多様性を持った文化であったという新たな見方に転換させる大きな意義があると考えている。
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