研究課題/領域番号 |
19K00982
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
佐藤 元英 中央大学, 政策文化総合研究所, 客員研究員 (70276450)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 領事官会議 / 排日 / 経済摩擦 / 東方会議 / 満蒙問題 / 満州事変 / 日中戦争 |
研究実績の概要 |
領事官の実務として集積された領事官会議録をデータベース化する研究作業を行った。在満州領事官会議の記録群を、第一期1917年~30年満州事変前、第二期1931年~32年満州国の建設まで、第三期1933年~36年日中戦争前、第四期1937~44年日中戦争後、の4時期に区分し、そのうち第一期から第三期まで(1917年~1936)の会議録をデータベース化した。 満州事変以前の「産業立国策」「東方会議」にともなって起きた経済摩擦、主として土地商組をめぐる農場経営問題、鉄道敷設交渉、中国側の不当課税などの実態を明らかにすることができた。大正10年及び昭和2年、東京外務省で行われた「東方会議」は領事官会議で議論された満洲問題を国策として対処しようとしたもので、軍部・満鉄関係者も加わって論議され、その結論は閣議決定された。 台湾中央研究院においての史料調査は、民国10年から21年までの日中間の外交及び経済関係、特に排日運動(日貨排斥ボイコット等)を中心に行った。その主な記録史料は以下のとおりである。中華民国政府の排日教育関係、日本政府の排日運動停止要求関係、1925年民国政府成立時の外交部・経済部の組織機構関係、1928年在行政院轄下設置と農鉱工商部職掌記録関係、1931年全国経済委員会設立経緯・一般事務機構関係、棉業貿易統制関係。 期待される成果として、日中経済摩擦の実態と排日貨・抗日運動の変容と、それに対する領事官会議の議論決定は、どのようにして国策に取り入れられたのかを明らかにすることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1、外務省外交史料館所蔵文書マイクロフィルムおよび”Checklist of Archives in the Japanese Ministry of Foreign Affairs”(S13.2.3.0-3)マイクロフィルムを業者に委託してCD化した。それに基づき、「在満領事官会議」のデータベース(年次順・地域別・案件別)を作成、「在満領事官会議」の議事録・会議資料は、昭和19年を残すのみである。 2、慶応義塾図書館所蔵「村上義一文書」、防衛省防衛研究所図書館所蔵「密大日誌」に関連文書調査について、約120頁を収集した。 3、大正10年及び昭和2年の東方会議について、日程・会議次第・決議・参加者の主な意見、などについてまとめ、領事官会議での議論と国策決定の関係を明らかにすることができた。 4、昭和2年の東方会議について、日本国内の主として外務省、満鉄、関東庁、陸海軍関係者の史料収集は十分調査することができたが、中国での調査、大連図書館、瀋陽档案館、天津南開大学での史料調査等は、新型コロナウイルス感染問題のため次年度に持ち越された。 5、昭和19年度在満領事官会議録、中支領事官会議録等の史料ついてのマイクロフィルムからのデジタル化は、予算オーバーと業者の作業日程から次年度に延期した。しかし、研究の進捗を妨げるものではない。
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今後の研究の推進方策 |
昭和19年の在満領事官会議、在南支領事官会議、在中支領事官会議の議事録・会議資料のデータベース(年次順・地域別・案件別)を作成する。在北支領事官会議については次年度に持ち越すことになる。 本年度における研究の中心は、満洲事変後から日中戦争勃発前の華北経済開発をめぐって起こった排日貨・排日運動である。世界恐慌以後の日本国内の経済復興と対中国経済政策の関連から領事館会議の状況を分析する。 研究計画に掲げていた中国档案館での調査(天津・上海・香港)は不可能と思われ、また、台湾中央研究院での調査を行いたいと考えているが、これも実行できない場合は、田中義一関係文書、斎藤実関係文書、イギリス外交文書等の調査を行う。日英の対中国経済政策と中国の排英、排日の状況を調査研究する。 大正10年、昭和2年の東方会議を中心に、満洲事変前の在満領事官会議にみられる日中経済摩擦(貿易通商の不当課税問題、土地利用農場経営問題、鉄道敷設と物流問題など)について、今年度中に報告書をまとめ、「中央大学政策文化総合研究所年報」(2021年7月刊行予定)で発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
外務省外交史料館所蔵領事官会議録の昭和19年満洲国領事官会議録、中支領事官会議録等のマイクロフィルムからのデジタル化作業経費は概ね25万円になる見込みとなり、予算オーバーとなることに加えて、業者の作業日程の理由から2020年度に先延ばしをした。従って127,400円の残額と不足額を2020度予算から補ってデジタル化作業を進行させる予定である。
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