研究実績の概要 |
極東国際軍事裁判のために押収された外務省記録、Checklist of Archives in the Japanese Ministry of Foreign Affairs, Tokyo Japan, 1868-1945.のUD(Un Filed Documents)より、在上海総領事館及び南京大使館・総領事館の排日貨問題に関する報告書を調査した。その結果、在上海総領事館報告に関しては、昭和14年~16年の排日貨関係文書を分析した。「上海に於ける排日運動情報」、「中共機関紙大衆報の日蘇関係並支那抗戦の前途に関する件」などの他27件。また、南京大使館・総領事館報告に関しては、昭和15年から17年の排日貨関係文書を分析した。「重慶側関係諜報報告の件(三民主義青年団)」、「重慶政権の対日宣戦布告に関する件」などの他8件。これらの史料によって、日米開戦前後の排日貨運動、抗日運動、反日的華僑の動静などを具体的に確認できた。 中国の排日貨問題は、日本の経済政策及び満洲事変、日中戦争に多大な影響を及ぼした。そのため、国会の質疑対策として調書が作成されており、「昭和9年12月 東亜局第一課 最近支那関係諸問題適用(第六十七特別議会用)」では、以下の各地の領事官報告を分析した。北支方面(北平、天津、済南、張家口)、中支方面(上海、杭州、南京、蕪湖、九江、漢口、鄭州、長沙、宜昌、沙市、重慶)、南支方面(福州、厦門、汕頭、広東、海南島、雲南)。日貨排斥の運動は、1933年5月31日の「北支停戦協定」成立後も依然として継続しており、日本政府は、排日貨行為の徹底的取締りを中国側に要請し、日中関係改善を国民政府に強く要請するとともに、出先日本総領事館に厳格に対応をするよう訓令している。中国学生運動、共産党の策動は米国に波及し、米国の反日思想、対日経済制裁に大きな影響を及ぼしている事実も確認できた。
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