研究課題
基盤研究(C)
本研究では、ある「個人」が抱く(1)願望の内容、(2)成就の手段、(3)祈りの効果、(4)祈りに対する「個人」の受けとめ、(5)その結果による「個人」的信仰の変化、を軸に検討を進め、「個人」的な願望成就の手段としての祈りに武家・寺家という権力体が、一方で抑圧をみせていた歴史的環境について明らかにし、武家社会を構成する武士「個人」に拡張するという課題も浮き彫りとなった。
日本中世史
日本中世では公武の政権が願望成就の手段として祈りを選択してきた。その一方で、宗教性を内包する権力支配を下支えする「個人」について考察したことが本研究の意義である。人間社会と宗教との関係は現代においても重要で、日本ではそれが見えにくいが、歴史的考察によって浮き彫りとなった宗教性の特質が、現代社会と宗教との関わりをいかに考えるかの補助線になり得るという点が、もう一つの本研究の意義である。