研究課題/領域番号 |
19K00998
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
山田 敦 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (80322767)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 日本統治期台湾 / 明治期北海道 / 台湾総督府 / 殖民地撰定 / 田代安定 / 移民政策 |
研究実績の概要 |
文献研究においては、「台湾総督府档案」(台湾の国史館台湾文献館所蔵、ネット閲覧可)の「殖民地撰定」事業に関する文書を整理解読し、成果の一端を、12月の日本台湾学会関西部会において「統治初期台湾の日本人移民計画ー「殖民地撰定」事業を中心にー」として報告した。この報告で、日本統治初期の台湾における「殖民地撰定」の実施と事業成果発表の過程(および事業成果について、事業担当者の原稿と総督府刊行物の間での内容や評価の違い)を明らかにしただけでなく、従来は台湾総督府殖産部が単独で行っていたと考えられていた事業が、地方行政機関の緊密な協力によりなされていたことを明らかにした。 2度の入院により本研究は年度内に完結しなかったが、研究が完結すれば、明治期北海道の「殖民地撰定」と比較研究をする資料的基盤を固めることができる。それは、火災による資料消失により詳細不明な点が依然として多い北海道の「殖民地撰定」事業の手掛かりをつかむことにも繋がる。 フィールドワークにおいては、2度の入院とコロナウイルス流行によって、北海道・石狩平野については6月に予備調査(入院前に立案)、台湾・高雄近郊においては9月に簡単な調査(学生の短期語学研修に同行して高雄へ行き、時間の合間を利用しての調査。短期語学研修への同行は入院前に立案)というように簡単な調査に終わった。しかしながら、ともに短時間ではあっても「殖民地撰定」の対象となった現地(石狩平野では新十津川町、高雄近郊では手巾寮集落)を見ることができ、一定の知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
5月に総胆管結石で緊急入院して内視鏡的結石除去術を受け、8月に胆のう摘出手術を受けたため、それぞれ入院加療および退院後の安静を必要とした。年度末はコロナウイルス流行への対応業務(留学中の学生への対応責任者の一人であった)に忙殺され、出張自粛により内外への調査出張もできなくなった。 以上のように、本年度は個人的(身体的)・社会的ともに予期せぬ出来事があった。身体的には節制・減量に努め、入院前よりも良好な(2020年度の課題遂行に何ら悪影響を及ぼさない)体調を得るに至ったが、研究遅延を回復するまでには至らなかった。また、コロナウイルス流行の影響は大きく、全般的な進捗に影響があったと言わざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度も海外(台湾)での調査は困難が予想されるが、ネットによる台湾の文献蒐集や台湾研究者との議論は何ら支障ない。また国内(北海道・東京)での調査も可能であろう。 よって、本年度は2019年度に終えることができなかった「台湾総督府档案」のネットを介した研究と整理を終えて紀要への成果掲載を行うとともに、夏には、当初予定していた十勝平野でのフィールドワークに加えて、2019年度は最低限の調査しかできなかった石狩平野でのフィールドワークを行う。それら成果を踏まえて、年度後半は2020年度に予定していた北海道と台湾との比較に取り組む。一方で、当初予定していた台湾でのフィールドワークは、2021年度へ延期する。 これら計画変更は、研究日程の年度をまたいだ入れ替えと研究経費の組み換えで対応できる範囲内である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年5月に総胆管結石で緊急入院して内視鏡的結石除去術を受け、8月に胆のう摘出手術を受けたため、それぞれ入院加療および退院後の安静を必要とした。年度末はコロナウイルス流行への対応業務(留学中の学生への対応責任者の一人であった)に忙殺され、出張自粛により内外への調査出張もできなくなった。行った出張においても、航空券を北海道・石狩平野は自費(マイレージ使用)で、台湾・高雄は大学経費で支出したため節約となった。そのため旅費を中心に大幅な次年度繰越が生じた。 2020年度は「今後の研究の推進方策」に示す通り、当初予定していた十勝平野でのフィールドワークに加えて、2019年度は最低限の調査しかできなかった石狩平野でのフィールドワークを行い、繰越分旅費を使用する。台湾調査の旅費については、2021年度に使用する。
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