研究課題/領域番号 |
19K00999
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
山崎 雅稔 國學院大學, 文学部, 准教授 (40459392)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 菩薩半跏像 / 弥勒信仰 |
研究実績の概要 |
所期の研究実施計画にもとづいて、2023年2月21日から27日、3月20日から26日にかけて2度にわたる韓国調査をおこなった。この調査では、菩薩半跏像をはじめとする仏教彫刻などを実見して、仏像の年代観・制作地の推定作業の参考とすること、朝鮮半島における仏教の受容と変容について、現存資料及び最新の研究成果を通して俯瞰することをめざし、あわせて本研究のもう1つの目的である仏教関係の古代金石文の調査・情報収集を進めた。 1回目の2月調査では、朝鮮半島西部、すなわち古代において百済の文化圏に属したソウル・公州・扶余・全州・清州の博物館・寺院址を訪れた。韓国の国宝第78号・83号(ともに菩薩半跏像)、「延嘉七年」銘金銅仏、弥勒寺址出土の舎利奉安記を実見、宋山里古墳群の仏教的要素、瑞山磨崖仏、礼山里石造四面仏、鄭智遠金銅如来立像に関する新知見を得たほか、国立清州博物館では、追善供養を目的とする仏碑4点を調査した。このうち1点は弥勒菩薩とみられる半跏像を浮き彫りしたもので、弥勒信仰の様相を解明する貴重な資料であり、今後研究を進めていく。 2回目の3月調査は朝鮮半島東部、すなわち古代における新羅の文化圏に属した慶州・大邱・陜川の博物館・寺院(址)などを調査した。陜川・海印寺(9世紀創建)の聖宝物博物館では、半跏思惟像1体(但し真贋不明)、海印寺妙吉祥塔誌群を調査、国立大邱博物館にて菩薩半跏像2体、桐華寺石塔の舎利荘厳具等を調査した。国立慶州博物館では三花嶺弥勒倚像を調査したが、発見当時の日本人関係者による随想・スケッチなど新資料を入手した。また、弥勒立像・菩薩半跏像が描かれた断石山神仙寺磨崖仏群の調査を実施し、磨崖仏群の空間構成について新たな知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の蔓延により、2023年度前半は国内外における調査を控えざるを得なかった。また、データベース構築のための研究活動補助員(アルバイト)を確保できず、作業が進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の延長申請が承認されたことから、以下の4項目を軸に研究を推進していく。(1)データベースの入力作業。研究活動補助員を確保できたことから、古代仏教関係金石文のデータベース構築に向けて準備を進める。(2)菩薩半跏像データベースの整理。国内外の博物館・美術館・個人が所有する菩薩半跏像に関する情報(現在までに約250件を収集)を再整理するとともに、データを追加する作業を進める。 (3)国内・海外調査の実施。2023年8月にヨーロッパにおける菩薩半跏像の調査、19世紀後半から20世紀初頭にかけての仏教美術の売買に関する情報収集をおこなう。また、奈良・京都の博物館・寺院が所蔵する菩薩半跏像等の調査を実施する。 (4)研究成果の公開、検討会の実施。(1)のデータベース作成と並行して、毎月1回のペースで検討会を開催し、金石文の釈文の作成・現代語訳をおこない、その精度を高めていく。また、本研究の成果の一部を8月にベルギーで報告する予定があるほか、論文化するとともに、収集した研究資料・調査成果をまとめ、最終年度にかかる報告書を作成する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の蔓延により、所期の研究計画を遂行できなかったため、次年度使用額が累積して上記の額になった。実施できなかった国内外での調査を実施するとともに、研究活動補助員(アルバイト)を雇うなどしてデータベースの構築に努めるなど計画を遂行していく。
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